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ロマンあふれる詩情の美
東郷青児名作展
          
   
会 期 平成6年4月21日〜4月30日
主 催 北國新聞社・石川県立美術館
協 力 安田火災東郷青児美術館
展示室 第8・第9展示室使用
   
 本展は安田火災東郷青児美術館の所蔵品の中から、油彩47点、水彩・素描27点、彫刻2点、計76点を展示し、芸術の大衆化をめざした東郷芸術の本質を明示するものであった。
 東郷青児は前衛の旗手として画壇にデビューし、ヨーロッパ留学中に日本の伝統美を再発見し、「理屈があって絵がない絵ではなく、理屈がなくても絵である絵、誰が見ても、これはきれいだとか、やさしいとか、わびしいとか、すぐにだれにでもわかる絵を描きたい」と考えるようになった。
 モダンでキュービックでしかも大衆的な、わかりやすい独特の美人画は日本の伝統と油絵の融合であり、オリジナルなものである。その意味で東郷は戦後の洋画壇を代表する画家の一人であった。

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四巨匠
中川一政・宮本三郎・高光一也・南政善の世界
 
 
会 期 平成6年5月2日〜5月23日
主 催 石川県立美術館
協 力 松任市立中川一政記念美術館
展示室 第7・第8・第9展示室使用
   
 本展は石川の洋画家を代表する宮本三郎、高光一也、南政善の3氏に、本県ゆかりの中川一政を加えた4名の名作108点を一堂に会し、彼らの制作の歩みと、戦後の具象絵画の変遷を提示することを目的とした。
 戦後の変転著しい美術界にあって、4人は人物画、風景画に一境地を築いた。安井賞の変遷にもうかがえるように、戦後の具象絵画は振幅の大きい、あるいは迷いの多いものであった。こうした中で4人は30年代、抽象の画面構成をいかに自己の作品に取り入れるかに苦心し、40年代以降、戦前期にみせた様式をさらに拡充させ、完成期を迎えた。
 現在、具象絵画は美術評論等において批評の対象として取り上げられることは少ない。しかし、彼らの残した作品は雄弁に時代を語り輝きを失ってはいない。具象を追い求めた各作家の名作により、ものを見ることとは何か、描くこととは何かをあらためて問うものであった。

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幻想と神話と自然と人間
ナンシー美術館名作展
−ティントレットからマネまで−
   
会 期 平成6年6月25日〜7月17日
主 催 北陸中日新聞・石川テレビ放送・石川県立美術館
後 援 フランス大使館・石川県・金沢市・石川県教育委員会・金沢市教育委員会・NHK金沢放送局・エフエム石川
展示室 第7・第8・第9展示室使用
   
 金沢市と姉妹都市であるフランス・ナンシー市は、パリから東約280キロの位置にあり、エミール・ガレ、ドーム兄弟などが活躍した「工業時代の新しき芸術」=アール・ヌーヴォーの形成に重要な役割を担ったところとして知られています。
 ナンシー美術館は、1793年に当時の革命政府が創立した美術館のひとつで、ブランシャール、ドラクロアなど16世紀から19世紀までのフランス絵画、イタリア絵画、スペイン絵画、ルーベンスほかフランドル絵画、ボナール、モジリアニなどフランス近代絵画、ドームのガラス作品など約六千点の作品を所蔵するフランス屈指の美術館として知られています。本展は、16世紀から19世紀までのヨーロッパ絵画の大きな流れを時代別、テーマ別に読み解けるように、「17世紀と宗教画」「英雄たちと神々」「自然、廃墟、生物への傾倒」「19世紀フランス」と四つに構成した86点の油彩画によって展示された。

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戦後日本の具象美術
見えるものへのこだわり
 
 
会 期 平成6年10月5日〜10月23日
主 催 石川県立美術館
展示室 第7・第8・第9展示室使用
   
 本展は昭和30年代から40年代にかけて発表された具象作品(絵画・彫刻)の優品を一堂に集め、「見えるものへのこだわり」を持ち続けた作家達の時代への対応を明らかにするものであった。
 日本の高度経済成長期には、前衛美術がきわめて活発な展開をみせた。ことに30年代は、アンフォルメルの紹介などによって、作家は競うように表現主義的抽象を試み、具象作品は混迷の様相を呈した。多様な素材の使用、オブジェという概念の導入など、絵画・彫刻、いずれの分野とも大きな変革期にあった。ジャンルの枠を超える作品が生まれたのも、美術家が社会に積極的に関わり始めたのもこの時代の大きな特徴である。
 現在、この時期の美術は、変革の面のみがクローズアップされ、具象作家、作品が取り上げられることはあまりない。しかし、この時期に作られた具象の優品は多い。本展はこれまでの抽象美術一辺倒の戦後日本美術史を、再検証するものであった。

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蒔絵・人間国宝
寺井直次の世界

 
会 期 平成6年10月26日〜11月23日
主 催 石川県立美術館
展示室 第5展示室使用
   
 大正元年に生まれ、作家生活60年を越えて今なお創作活動に励む、金沢市在住の漆芸家寺井直次氏の初めての本格的な回顧展であった。東京美術学校時代の戦前の作品から最近作まで、日展および日本伝統工芸展出品作を中心に、よりすぐった秀作81点が展観された。
 氏は蒔絵のなかでもとりわけ卵殻技法に優れた技を見せ、また金胎素地についても大きな研究成果を挙げたことはよく知られている。そのたゆまない努力と成果に対して、昭和52年に加賀蒔絵で石川県指定無形文化財、60年には蒔絵で国の重要無形文化財の保持者にそれぞれ認定され、わが国を代表する漆芸作家として今日に至っている。
 その揺るぎない制作の堂々たる歩みの中で生み出された傑作群がもたらす、静謐な叙情をたたえた情感あふれる世界は、観覧者も大いに心を奪われたようで、熱心に鑑賞してゆく姿が目立った。

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