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人間国宝 隅谷正峯展
日本刀−その神秘なる彩り

 
会 期 平成4年1月4日〜2月2日
主 催 石川県立美術館
展示室 第6展示室使用
   

 重要無形文化財「日本刀」の技術保持者隅谷正峯氏の回顧展であった。同氏の展観はこれまで当館において、昭和57年25点、平成元年12点を展示しているが、今回は初期から最近作まで、そして刀剣だけでなく、刀子、篆刻なども加えて、多岐にわたる隅谷芸術を紹介しようとするものであった。
 同氏は、昭和14年京都立命館に入学後、師桜井正幸と出会い、日本刀作家としての道を歩み始め、戦後再開後は新作名刀展で最高賞の正宗賞を3回受賞するなど、現代刀工の最高峰と評価されている。
 鎌倉時代の備前刀を得意とし、独自の華麗な丁字刃文(隅谷丁字と呼ばれる)を完成し、地鉄の研究にも熱心で、自家製鋼の研究を経て、最近では銑卸の刀剣を制作しており、鎌倉時代の地鉄に近づきつつあるという。
 久しぶりの刀剣展であり、多くの愛好家が訪れて高い評価を受けた展観であった。

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第3回石川県作家選抜美術展
戦後生まれの作家たち
 
 
会 期 平成4年2月6日〜2月25日
主 催 石川県立美術館
展示室 第7・第8・第9展示室使用
   
 この展覧会は、石川県内在住もしくは県外で活躍している本県ゆかりの作家たちの動向を、継続的に紹介するもので、昭和59年度、昭和60年度に引き続く、第3回目の展覧会であった。
 過去2回の展覧会は、新進・中堅を中心に比較的多くの作家の選抜を行ったが、今回は、そうした全体的状況の把握から視点を変えて、作家一人一人の絵画世界を明らかにするという方針にたち、《戦後生まれ》という選択基準のもとで、絵画、彫刻、工芸の各分野から19人の作家を選び展示した。
 本県における最近の美術動向と、次への新しい展望の一端を紹介する主旨であり、この観点から大いに意義のある展覧会であった。

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中川一政生涯展
   
会 期 平成4年4月25日〜5月17日
主 催 石川県立美術館・北陸放送
後 援 松任市立中川一政記念美術館
協 力 真鶴町立中川一政美術館
展示室 第7・第8・第9展示室使用
   
 平成3年2月に逝去した現代日本洋画壇の最高峰の一人で、文化勲章受章者でもある中川一政氏の一周忌にちなみ、その生涯をたどる回顧展であった。
 明治・大正・昭和・平成と四つの時代にまたがり、80年にも及ぶその仕事は、絵画のみならず、書、篆刻、作陶から挿絵、装丁あるいは詩、短歌など文学の諸分野にまで広がっており、出品点数は273点にも達した。
 父が金沢市、母が松任市出身で、石川県とのゆかりも深く、洋画家でありながら文人的な要素を多分に秘めており、その筋の通った精神的内奥に潜む中川一政の思想が伝わった展観で、氏の偉業に魅せられた鑑賞者も多く、好評を博した。

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生誕120周年記念
ジョルジュ・ルオー名作版画展
 
 
会 期 平成4年7月17日〜8月2日
主 催 北陸中日新聞・石川テレビ放送・石川県立美術館
後 援 石川県教育委員会・金沢市教育委員会・NHK金沢放送局・エフエム石川
展示室 第7・第8・第9展示室使用
   
 宗教画を20世紀に見事に開花させた画家として知られる、ジョルジュ・ルオーの生誕120年を記念して開催された。
 ヨーロッパ精神の中枢と密に関わりあいながらも、アカデミズムに固執することなく従来の規範に囚われない技法と様式によって、新しい形での宗教画を表したルオーの版画を通して、その精神の神髄を探ろうと企画され、「ミゼレーレ」「悪の華」「受難」など代表的な8つのシリーズ、198点が展示された。
 ルオーの版画芸術の全貌を紹介するもので、その崇高な芸術の高さに触れるよい機会として、鑑賞者の好評を博した。

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友禅 人間国宝
羽田登喜男展
 
 
会 期 平成4年8月29日〜9月21日
主 催 石川県立美術館
展示室 第7・第8・第9展示室使用
   
 この展覧会は、昭和63年に友禅で重要無形文化財保持者に認定された羽田登喜男氏の故郷における初めての回顧展であった。
 羽田登喜男氏は明治44年金沢市に生まれ、隣家の南野耕月に加賀友禅の技法を学んだのち、さらに京都の曲子光峰のもとで京友禅を修得し、昭和12年には友禅作家として独立、以来一貫して友禅染の制作・研究を続け今日に至っている。
 羽田氏の友禅は、写実的な絵模様を彩る加賀友禅に、華麗な配色・雅な意匠を伝える京友禅を融合させたもので、作者独自の今日的な友禅の世界を創出し、主として花鳥風月に題材を求めており、その華やかな羽田友禅の世界に、鑑賞者は十分魅了された。
 本展は、初期から新作を含む71点を展示し、羽田友禅の足跡をたどるには、またとない機会となった。

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