重要無形文化財「日本刀」の技術保持者隅谷正峯氏の回顧展であった。同氏の展観はこれまで当館において、昭和57年25点、平成元年12点を展示しているが、今回は初期から最近作まで、そして刀剣だけでなく、刀子、篆刻なども加えて、多岐にわたる隅谷芸術を紹介しようとするものであった。 同氏は、昭和14年京都立命館に入学後、師桜井正幸と出会い、日本刀作家としての道を歩み始め、戦後再開後は新作名刀展で最高賞の正宗賞を3回受賞するなど、現代刀工の最高峰と評価されている。 鎌倉時代の備前刀を得意とし、独自の華麗な丁字刃文(隅谷丁字と呼ばれる)を完成し、地鉄の研究にも熱心で、自家製鋼の研究を経て、最近では銑卸の刀剣を制作しており、鎌倉時代の地鉄に近づきつつあるという。 久しぶりの刀剣展であり、多くの愛好家が訪れて高い評価を受けた展観であった。