[古美術部門] 　第１・第２展示室、前田育徳会展示室　（２Ｆ）

　　フランスを代表する国民的画家であり、日本ではその深い感情と敬虔なる宗教性で広く愛され続けてきたジョルジュ・ルオー（1871-1958）の展覧会を開催します。

　ルオーは、パリの家具職人の家に生まれ、14歳の時、ステンドグラス職人のもとに弟子入りします。後に国立美術学校に入学、そこで象徴主義の画家ギュスターヴ・モローに師事して多大の影響を受けます。やがてサーカスの道化・裁判官といった特異な主題やキリスト教の信仰に基づく主題を、力強い筆づかいと厚塗りを特徴とする暗く輝く色彩で描き続け、精神性の高い作品を数多く残しています。

　出光美術館の所蔵するルオー・コレクションは、世界屈指の質と量を誇るものです。本展はその400点近いコレクションの中から、ルオーの個性を存分に味わうことのできる重厚な絵肌の油彩画とともに、初期の鮮烈な水彩画、そして比類なき深みに達した版画の傑作など、あわせて200余点を展示いたします。中でも、ルオーの画業の中でも重要な位置を占める連作油彩画「受難」64点や、人間の悲惨・傲慢・孤独の描写から、慈悲の心と平和への祈りへ導く感動的な連作版画「ミセレーレ」58点など、珠玉のシリーズをまとめてご覧いただける貴重な機会となります。

　本展によりルオーの造形の魅力を再発見していただき、その作品にこめられた真摯な思いを感じ取っていただければ幸いです。