前田育徳会展示室

特別陳列 加賀藩の美術工芸

9月1日(金)〜9月24日(日)


 加賀藩主前田家は、桃山時代に活躍した藩祖利家以 来、歴代藩主が文化事業に深い関心を示しています。 中でも三代藩主利常(1593〜1658)は傑出し た文化大名として知られています。
 利常は利家の四男であり、二代藩主利長とは異母弟 です。慶長10年(1605)13歳の時、利長隠居に より三代藩主となりましたが、これは加賀藩温存の処置といわれます。
  また寛永16年(1639)、家督を 光高に譲り、小松城に隠居しました。しかし正保2年 (1645)、四代藩主光高が急死し、その跡を三歳の綱紀(つなのり) (1643〜1724)が継ぎましたが、その後見として小松城で政治をみています。
 後水尾(ごみずのお) 天皇や小堀遠州などと親交を持ち、京文化を受容し、平安王朝の美の精華ともいうべき名だたる名筆や、名物茶道具を収集しました。
  一方その目は海外にまで及び、長崎を窓口に舶載される貴重な名物裂や中国の陶磁器、漆器などを豊かな経済力を背景に購入し、加えて東イン ド会社を通じオランダのデルフト陶器を注文するなど、 利常の美意識には幅広いスケールの大きさを感じ取ることができます。

  また蒔絵の名門五十嵐道甫や清水九兵衛、金工の七代後藤顕乗(下後藤)や後藤覚乗(上後藤)など、京都や江戸から優れた一流の名工たちを高禄で召し抱え、藩内の美術工芸の振興に努めました。 なお、大聖寺藩では、古九谷の窯が興っています。
 利常の孫で五代藩主綱紀は、学者大名と目されます。 学芸に関心深く、著名な学者を招聘(しょうへい)し、また「尊經閣蔵書」に代表される和・漢・韓にわたる貴重な文書・典籍類を収集しています。
 また、江戸時代の工芸技術に関する貴重な資料を収集・分類した「百工比照(ひゃっこうひしょう)」を大成しました。
 綱紀の代には、京都の裏千家四代で綱紀の茶堂を務めた千宗室仙叟の指導により、初代宮崎寒雉が 侘(わ) びた茶の湯釜を造り、また初代大樋長左衛門も大樋焼を始めています。加えて友禅染なども興りました。
 今回は利常、綱紀の代に収集・育成された内外の名品を中心に、一部江戸時代後期のものも含み、33点を公開します。 
 主な展示作品    (◎は重要文化財)

         ◎アエネアス物語図毛綴壁掛
         ◎餝太刀(石突欠)附平緒
           真鳥羽入箪笥    清水九兵衛

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第2展示室

特別陳列 芭蕉翁の頭陀袋と俳画

9月1日(金)〜9月24日(日)


 今回の展示は、松尾芭蕉の所持と伝えられる頭陀袋 と、加賀の俳画を中心に展示するもので、芭蕉の来遊 を契機に発展した加賀の俳諧と俳画をながめるものです。 以下に各展示の構成をご紹介いたします。
 
  —芭蕉奥の細道と加賀—
  松尾芭蕉は、元禄2年(1689)門人曽良をともない、陸奥・出羽を経て金沢に入りました。金沢での10日間の滞在期間中は、一笑の追善句会に出席したほか、野田山や宮腰(金石) に遊び、句を詠むとともに、門弟が集まって句会も開 かれました。
 次いで小松や加賀では那谷寺や多太神社そして山中に赴き、各地の名所旧跡を訪れて句を詠ん だり句会が開かれたりしました。
  20日余りであった芭蕉の加賀の滞在で、加賀には蕉風が根付き、俳諧が 町人文化の一つとして盛んとなります。
 展示では芭蕉の句をはじめ、芭蕉と門弟間の書簡や芭蕉画像・木像などを展示し、加賀での芭蕉尊崇と思慕の念が篤かっ たことを偲びます。
 

 —芭蕉の門人達と俳画—
 加賀の俳諧は、蕉風俳諧が大きく開花し多彩な展開をみせました。加賀には、一笑、小春、北枝、牧童、句空、秋の坊、万子、希因や麦水などから、千代女などに至る多彩な俳人が国内外に活躍し、多様な展開を示しました。蕉風俳諧は高い文芸性を確立しながら、町人を中心に広まりをみせることとなります。
 また江戸時代の俳諧のもう一つの特徴は、美術と文芸が融合して、俳画が独立したジャンルとしても成立して大いに発展しました。蕉風俳諧の中興の祖であり、優れた文人画家でもあった蕪村などの活躍の影響が全国に広がります。
 —女流俳諧の世界—
 俳句の世界も和歌と同じく、女流俳人が活躍しました。加賀においても千代女を代表に女流俳人の活躍がみられます。
 女性ならではの細やかな心情と眼差で、主に日常の情景描写を中心に詠んだ名句が多くみられます。
 展示では千代女のほか加賀の女流俳人達の作品を交え、彩り豊かであった女流俳諧の世界をながめます。

 主な展示作品   (○は重要美術品 □は石川県指定文化財)
    古九谷
         色絵鶴かるた文平鉢
       
色絵布袋図平鉢

    特別陳列芭蕉翁の頭陀袋と俳画
        □温泉頌山中の句    松尾芭蕉
          頭陀袋(芭蕉所持)
          鹿の図画賛        千代尼賛・四如軒画

       
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