石川の工芸Ⅰ加賀象嵌ってなあに?  第5展示室
 平成27年6月11日(木)〜7月20日(月・祝) 会期中無休     

加賀象嵌は、その名に「加賀」を冠することが示すとおり、石川を代表する伝統工芸のひとつとし て認められています。しかし実際、それがどういうものなのかは、なかなか複雑です。
 加賀象嵌の歴史は、二代藩主前田利長が、後藤家五代徳乗の三男琢乗を召し抱えたことに始まるといわれます。後藤家は室町時代より代々将軍家の刀装御用をつとめた家柄です。以降、寛文2年(1662)まで、京都と江戸の後藤家が、隔年で加賀へ下って指導にあたり、加賀の金工に大きな影響を与えました。表紙の「金銀象嵌雪に鷹図香炉」の作者である八代水野源六の家系は、後藤家の弟子筋です。白銀師と呼ばれ、加賀にあって藩の御用を取りまとめる特別な地位にありました。
 とはいえ加賀の金工は、単に後藤家を真似ているだけではありません。例えば、表面が滑らかな仕上がり(平象嵌)、重ねた象嵌(鎧象嵌)、断面が台形になるようにアリをたてた彫り込みなど、今日、加賀象嵌の特徴として挙げられるものは、江戸時代、主に鐙に用いられて発展しました。こうした技法がどのように確立していったのかはまだ明らかではありませんが、職人たちが、さまざまな試行錯誤をしつつ醸成していったことでしょう。
 加賀象嵌は近代に入ると大きな打撃を受けます。米沢弘安の死によって消滅の危機に瀕しますが、高
橋介州らの作家たちにより、今なおその命脈を保っています。
 今回は、そうした加賀象嵌の軌跡を、作品によって辿っていただきたいと思います。

《詳しくはこちらをどうぞ→②》


特集 加賀象嵌ってなあに?
NO 分野 作家名 作品名 制作年
1 金工 小市永政 銀象嵌牡丹文鐙 銘加刕金沢住小市三良右門尉作 17世紀
2 金工 小市永次 銀象嵌花筏文鐙 銘金沢住永次作 18世紀
3 金工 高橋介州 加賀象嵌孔雀香炉 1956
4 金工 八代水野源六 金銀象嵌雪に鷹図香炉 19世紀
5 金工 山尾次吉 金銀象嵌唐草文香炉 1910頃
6 金工 初代山川孝次 金銀象嵌草花文鳥籠置物 19世紀
7 金工 米沢弘正 金銀象嵌龍虎人物図燭台 19世紀
8 金工 米沢弘安 金銀象嵌紅葉狩図香炉 1933頃
9 金工 米沢弘安 金銀象嵌鴛鴦図香炉 1970
10 金工 銅器会社 金銀象嵌花鳥人物文薄端 19世紀
11 金工 銅器会社 金銀象嵌牡丹唐草文蝋燭台 19世紀
12 金工 米沢弘安 金銀象嵌六角壺 1958
コレクション展示
NO 分野 作家名 作品名 制作年 出品展覧会
1 陶磁 石黒宗麿 黒釉茶碗 1960  
2 陶磁 九代大樋長左衛門 黒茶わん 銘大黒 1970  
3 陶磁 十代大樋長左衛門 渦紋筒水指 1970  
4 陶磁 河井寬次郎 花絵扁壺    
5 陶磁 北大路魯山人 染付波飛魚図水指 1929  
6 陶磁 北出不二雄 赤絵初夏壺 1981  
7 陶磁 初代須田菁華 染付水禽文八角香炉    
8 陶磁 武腰 潤 盤「花王」 1998 第21回伝統九谷焼工芸展 大賞
9 陶磁 竹田有恒 萌黄釉裏金彩葱文鉢 1976 第23回日本伝統工芸展
10 陶磁 三代徳田八十吉 深厚釉組皿 1983

第6回伝統九谷焼工芸展
九谷連合会理事長賞

11 陶磁 富本憲吉 染付色絵菱文角箱(大) 1944  
12 陶磁 富本憲吉 染付色絵菱文角箱(小) 1944  
13 陶磁 中田一於 釉裏銀彩切箔組皿 1985 第8回伝統九谷焼工芸展
14 陶磁 初代松本佐吉 色絵朝顔図花瓶    
15 陶磁 二代松本佐吉 色絵牡丹文大皿 1980 第6回石川県工芸作家選抜美術展
16 陶磁 南 繁正 色絵露草文皿 1986 第9回伝統九谷焼工芸展 優秀賞
17 陶磁 森 一正 色絵朝顔大皿 1962 第24回一水会展 一水会賞
18 陶磁 吉田美統 釉裏金彩更紗文壺 2006  
19 漆工 大場松魚 平文千鳥盛器 1978 第3回石川県工芸作家選抜美術展
20 漆工 小松芳光 呉竹漆盛器 1978 第10回改組日展
21 漆工 塩多慶四郎 乾漆盤「雲」 1968 第15回日本伝統工芸展
22 漆工 寺井直次 金胎蒔絵盤 瑞鳥 1993 第40回日本伝統工芸展
23 漆工 前 大峰 沈金花壇文飾筥 1969 第16回日本伝統工芸展
24 漆工 松田権六 松蒔絵飾箱 1966 第13回日本伝統工芸展
25 漆工 三谷吾一 双魚飾皿 1976 第1回石川県工芸作家選抜美術展
26 染織 初代由水十久 友禅色留紋付福神見立童児文 1980  
27 染織 毎田健治 友禅訪問着「爽風」 1979 第1回伝統加賀友禅工芸展
28 染織 坂井教人 訪問着「朝凪」 2000

第37回日本伝統工芸染織展
東京都教育委員会賞

29 染織 能川光陽 色留紋付「聖華来日」 1981 第3回伝統加賀友禅工芸展
30

木竹工

川北浩一 神代欅盛鉢 1976 第23回日本伝統工芸展
31 木竹工 氷見晃堂 栃造八稜箱 1956 第12回日展
32 截金 西出大三 截金彩色鶏の合子 1962 第9回日本伝統工芸展
33 人形 紺谷力 塑造彩色「腰鼓遊楽」   第8回石川県工芸作家選抜美術展

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