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学芸員コラムColumn

2019年9月25日その他【美術館小史・余話21】美術を学ぶ婦人学級(一)

※本コラムは平成12年から平成16年にかけて、当館館長・嶋崎丞が「石川県立美術館だより」において連載したものの再録です。

 

旧石川県美術館 (現石川県立伝統産業工芸館)

 美術館の広報紙も発行することができ、愛好会会員も千名を越えた昭和43年度末、教育委員会社会教育課(現生涯学習課)から突然連絡が入った。文部省社会教育局(現文部科学省生涯学習政策局)が、地方で婦人を対象とした社会教育実践の場所を探しているというのである。講師等の多少の予算は付いているようなので、美術館で引き受けてくれないか、という内容だった。全国では只一ヶ所の開催、それも地方では初めだということなので、実施を引き受けることにした。
  実施するとはいうものの、美術館としても初めての教育普及事業であり、ある意味では、日本で今後行われていくであろう社会教育活動の、モデルにもなるということである。私共美術館職員に多少の緊張が走った。しかも文部省から届いた実施要項を見ると、延べ24回の学習プログラムを組まなければならないことになっている。これは大変なことを引き受けたと思った。前年第一回の開催場所は東京国立博物館だったので、早速プログラムを取り寄せて見てみると、博物館のそうそうたる面々が名前を連ねており、まさにお国だから出来た講座だったのである。
  しかし、何はともあれ、引き受けた以上はこうしたことはあまり気にせず、石川県らしいやり方で実施しようということで話はまとまった。ただ、当時の美術館学芸担当職員はわずかに3名。しかも一人は展示企画に専念している。結局私が企画から外部講師の交渉まで、すべて担当することとなる。その頃は加賀友禅の木村雨山さんなど、大物工芸家がご健在であり、金沢美術工芸大学の教授の方々も動員すれば、東京国立博物館にも負けない内容になるはずである。まずそんな見通しをつけた。
  (嶋崎丞当館館長、「石川県立美術館だより」第222号、平成14年4月1日発行)

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