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学芸員コラムColumn

2019年7月23日その他【美術館小史・余話15】文化財所在綜合調査の実施(1)

※本コラムは平成12年から平成16年にかけて、当館館長・嶋崎丞が「石川県立美術館だより」において連載したものの再録です。

 美術館の仕事の中心は、美術品の展示にそれがあることはいうまでもないが、一方で調査研究業務も重要な事柄の一つである。
 昭和34年に開館し、古美術を中心に、それなりの展示活動を行ってきたが、気が付いてみると、石川の地域にどのような美術品や文化財が存在しているかということについては、全く気を払ってきていない。
 そこで地域の人々と交流を深め、地域に所在する優れた美術品や文化財を再発見しようということで、文化財の所在綜合調査を実施することになった。
 開館してから7年目の昭和41(1966)年のことである。
 この頃美術館が単独でこうした調査を実施している所は、まだ皆無であった。
 さて実施することにはなったが、美術館には車がない。調査員も私を含めてわずか2人だった。そこで足を確保することと、スタッフを充実させる意味で、調査対象地域の市町村教育委員会と共催して実施することとした。
 しかし当時は今日のような車社会ではなく、教育委員会によっては専用車をもっていない所もあっ た。今考えれば随分と強引なやり方で実施したもので、当時の各教育委員会職員の方々にはご迷惑をおかけしたのではないかと、冷や汗をかく思いである。
 調査にご協力いただいた職員の方や、各市町村文化財保護審議会委員の相当数の方々は、もはや物故者が多くなり、昔日の感を深くする今日この頃である。
  (嶋崎丞当館館長、「石川県立美術館だより」第216号、平成13年10月1日発行)

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