Loading
画面を読み込んでいます

学芸員コラムColumn

2018年5月31日その他【美術館小史・余話4】旧館開会式

※本コラムは平成12年から平成16年にかけて、当館館長・嶋崎丞が「石川県立美術館だより」において連載したものの再録です。

 昭和34年10月12日、旧石川県美術館(現石川県立伝統産業工芸館)の開館式が、県内外各界の代表者、著名人など約250名が出席して盛大に挙行された。当時美術館職員として最も年齢が若かった私は、まさに緊張がピークに達した一日であり、当日何をしていたか全く記憶にない程であった。
 幸いにも当日の様子を撮影した8ミリ白黒フィルムが残されているので、それを見てみると、出席者のほとんどが故人となっておられ、まさに隔世の感がある。さらに、フィルムを見て今日の状況と甚だ異なるのは、当日自家用車や公用車で乗り付けられた招待者が、ほとんどおられないということだ。公用車等で来られた方は、当時の田谷県知事、西川商工会議所会頭、嵯峨北國新聞社社長、直山石川製作所社長のわずか4名で、あとの方々はタクシーか徒歩で来館される姿が写っている。昭和34年当時はまだそんな時代であった。
 またテープカットは田谷県知事ただ一人。今日5人も10人も並んで、お祭り騒ぎのようなテープカットをする状況とは、いささか趣を異にしており、厳粛そのものの開館式であった。見習うべきところが大いにあるように思われる。

(嶋崎丞当館館長、「石川県立美術館だより」第205号、平成12年11月1日発行)

ページの最上部へ