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学芸員コラムColumn

2016年9月30日展覧会#014 魅惑の線描

展示室風景(日本画)「線描といっても墨線だけじゃないんだよな。」つい、ひとりごつ。展示の際、菊池契月の《少女》を点検していたときの一コマです。本作は無地の空間に着物姿の少女がたたずんでいる、それだけの絵ですが、空間と少女を隔てる一本の線が、何ともいえぬ豊かさを持っています。とくに素肌の部分は、墨線だけでなく彩色を伴っており、それが清新さと色香を併せもつ、不思議な魅力をつくっているのかも知れません。
 今回の展覧会は、線描主体の作品が多く登場します。復興やまと絵の松岡映丘や、線描の名手と謳われた小林古径、安田靫彦ら。京都からは竹内栖鳳や堂本印象など。一口に線描といっても、一人ひとり趣がちがい、見ていて飽きません。
 これは、それぞれが持つ「線描のルーツ」に違いがあるからではないかと。たとえば、安田靫彦は俵屋宗達に私淑しており、その作から多くを学んでいます。また、小林古径の線描は大英博物館の《女史箴図》を模写したことに淵源がありますし、松岡映丘はもちろん「やまと絵」でしょう。冒頭の菊池契月は、なんとイタリア留学にて、チマブーエやジョットに大きな影響を受けているのです。
 「線描」に焦点を当てた鑑賞も、本展を楽しむコツのひとつとして、ぜひお試しあれ。 (前多武志)

 

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