今月の美術館だより
 第241号 平成15年11月1日発行


●美術館小史・余話 38 
嶋崎 丞(すすむ) 当館館長

新美術館開設に向けて(3)

  昭和55年4月1日付で、新美術館開設準備室が設置されたことは先回に述べた通りであるが、準備室でまず最初にすべきことは、美術館の基本構想の原案を作成することであった。美術館が全く無い地域ならいざ知らず、現に石川県美術館が活動しており、そこにもう一つ美術館を新設しようということであり、それなりの理由や位置づけを考える必要があった。

 私共開設準備室のスタッフに対して、専門的事項をアドバイスする新美術館専門懇話会も設置され、基本構想作成について議論がたびたび重ねられ、一ヶ月半位の間に原案を作成することができた。5月22日の開設準備委員会の承認を得て、26日には知事と県議会に対して答申が行われた。

  概要を記すと次の通りである。

使命、性格について
(1) 地方色豊かな美術館づくりを目指し、石川の地に育まれた美術の伝統を運営の柱とする。

(2)常設展示部門は、地域的個性を示す展示とし、前田育徳会所蔵品を展示する育徳会展示室を併設する。企画展示室では、内外の優れた美術品による意欲的な企画展を開催する。

(3)展示機能は、古美術から現代美術にまで対応できるように工夫した総合美術館形式を採用する。

(4)調査研究・情報資料の収集発信、教育活動の実施等多様な美術館活動を積極的に実施する。

(5)従来からの石川県美術館は分館とし、石川県の工芸の歴史的流れを見せる常設展示館とする。

 以上のようであり、今日大いに議論されている使命、性格が明確に記されていると思う。