今月の美術館だより
 第236号 平成15年6月1日発行


●美術館小史・余話 34 
嶋崎 丞(すすむ) 当館館長

旧館開館20周年記念展開催について(1)

  昭和50年代に入り、すでに見てきたように新美術館の建設についての要望が県民各層からあり、県は一応建設に踏み切ろうということになったが、私共美術館の職員にとっては、そのことより昭和54年に迎える開館20周年の歳に、どのような記念展を開催するかが重要な課題であった。

 開館10周年記念展では、「琳派の芸術」として、当時の美術館界から大変高い評価を受けているだけに、少なくとも10周年記念展に負けず劣らずの内容にすべきだとの意見が多々あり、私共企画担当者にとっては大変なプレッシャーが襲いかかってきた。そこで誰がいうともなしに「源氏物語絵巻」の全巻公開ができないだろうかという意見が出された。言うは易しいが開館10周年記念展どころの騒ぎではない大変難しい展覧会である。そこで源氏物語絵巻を最も多く所有されておられる徳川美術館のご出品が無いと、この展覧会は開催不可能であるので、昭和53年の初夏東京目白の徳川黎明会に徳川美術館長をまずお訪ねし、ご出品公開についてお願いすることになった。

 徳川館長は開口一番に「大変難しい相談に来られたね。」と話されたが、私は今まで開催してきた展覧会の実績などを含めて、今考えてみれば徳川館長がすべてご存じであるようなことを約1時間ほど滔々と述べて、まげてご出品をお願いしたい旨を申し上げた。話し合うこと約3時間、「基本的に了解した。」とのお返事をいただいたのが午後4時であった。丁度今頃の時節であったと思うが、黎明会を後にして気がついたら全身汗びっしょりであった。

 

 




源氏物語絵巻ポスター

「国宝 源氏物語絵巻展」
         ポスター