今月の美術館だより
 第235号 平成15年5月1日発行


●美術館小史・余話 33 
嶋崎 丞(すすむ) 当館館長

新美術館建設に向けての動き

 昭和48年2月、県に対して「新美術館建設について」の陳情があり、その後とんとん拍子で事が運んだかというと決してそうではなかった。受けてたつ県側にしても、現に存在する石川県美術館との絡みをどうするか、どの様な規模や内容の美術館を造るか、どこに建設すべきかなど、大いに検討すべきことが多々あり、そうこうしている間に2〜3年の月日があっという間に経ってしまった。

 こうした県側の動向に対し、再度石川県美術文化協会をはじめとする各種団体から、こんどは「石川近代美術館建設促進に関する要望書」が提出されてきた。最初の要望書と50年代に入ってからの要望書を見くらべてみると、新美術館が近代美術館へと名称が変わっていることが注目を引く。そこで私共内部でそのことについていろいろと検討してみると、要望書にいう近代美術館とは近代美術を対象とするミュージアムとしての美術館ではなく、作家団体の公募展が開催できる貸し会場を造って欲しい、ということであることがわかった。

 いわゆる昭和50年代の美術館ブームに乗って建設された各地の美術館を見てみても、ギャラリー単独で美術館を建設しているところはほとんどない。石川県の美術作家活動は、他県にくらべて盛んなものがあるとはいうものの、果たして年中展覧会を開催するほどの稼働率があるかどうか、こうしたことが議論の対象となった。私共美術館の職員としても、旧石川県美術館の施設規模では不十分であり、結果としてミュージアムオブアートの常設部分と、企画展と貸し展示とを併行して実施できるギャラリー部分を併せ持つ美術館を造ろうということになった。

 

 




旧石川県美術館

旧石川県美術館
(現在の伝統産業工芸館)