今月の美術館だより
 第228号 平成14年10月1日発行


●美術館小史・余話 27 
嶋崎 丞(すすむ) 当館館長

茶室「対青軒」「犀庵」の設置 (2)

 先号で述べたように、西川文平氏からは草庵風の茶室「犀庵」の寄附を受けたが、この茶室と別館一階の「対青軒」とを、どう関連付けてどこに再建するかが次の課題となった。犀庵はもともと個人邸宅の茶室であり、精々入っても6、7名が限度。これでは今日のような大寄せの茶会に使用するには不向きである。そこで別館一階部分の立礼席を待合い席とし、これと連続して使用出来る方法を考えようということになった。幸い別館の後の部分に空き地があったので、まずそこに別館と並んで後ろ向きに犀庵を再建して、さらに別館との間の部分を細長い露地として作庭し、飛び石伝いで犀庵の躙口(にじりぐち)に至るように設計していただいた。今考えても非常にうまく出来上がったのではないかと思っている。  ただ犀庵の再建場所は別館の高い建物のすぐ脇ということで、周りは背の高い海鼠土塀で囲まれるため、冬の積雪時は大変で、露地とともにその保存管理の手当てをするのは一苦労であった。しかしこうした形で茶室は見事に完成した。今程の公共茶室がまだなかった時代でもあったので、茶の湯の愛好者からは大いに歓迎され活用されて、今日の茶道隆盛の基を築いたのである。  さらにまた美術館の職員も、茶道を嗜む必要があるということで、毎週一回勤務終了後「対青軒」で、茶の湯の作法の稽古を行うことにもなった。指導は金沢一の先生に指導を受けるべきだということになり、故大島宗古さんに出稽古をボランティアに近い形でお願いした。しかし今思えば、随分と大胆なことをしたものだと冷や汗をかく思いで一杯である。この稽古は3年間続けることができた。


 

 

 

犀庵

犀庵