今月の美術館だより
 第227号 平成14年9月1日発行


●美術館小史・余話 26 
嶋崎 丞(すすむ) 当館館長

茶室「対青軒」「犀庵」の設置 (1)

 この連載20回目(第221号)で述べたように、本館施設の不備を補うべく、昭和43年9月には別館を設置した。その最も大きな意味は、一階部分に茶室を設けることにあった。連載13回目(第214号)でも触れたように、当館収蔵品の柱の一つとして、山川庄太郎さん旧蔵の茶道美術品のコレクションがある。これらを単に展示室で公開するだけではなく、実際に茶室で使ってみることによって、茶道美術の真髄を理解するということも重要な美術館活動であり、そのためにも茶室の設置はぜひとも必要だった。事実茶道美術品を収蔵している美術館には、茶室を設けてあるところは多い。戦後建設された公立美術館の中では、当館は早い方であったと思う。そして別館落成の日を迎え、その茶室開きには、山川さんの茶道美術品が堂々と使用されたのである。

  別館一階の茶室部分には、十畳の和室に四畳の水屋がついた部分があり、さらに十名が一堂に会することのできる立礼席の、あわせて二室が設けられた。

  この茶室の名前は、俵屋宗達の号にあやかって、かつて宝円寺にあった茶室「対青軒」の名称を引き継いだ。さらに揮毫(右上写真)を安田靫彦さんにお願いし、名札は彫刻家であり漆芸家でもあった吉田楳堂さんに制作していただいた。これは現在も茶席入口に掲げられている。その後昭和45年に西川文平さんから草庵風の茶室「犀庵」が寄附され、別館に附随して設置された。

対青軒内部

「対青軒」内部

 

 

対青軒

対青軒 安田靫彦書