●美術館小史・余話 31 嶋崎 丞(すすむ) 当館館長
年中無休開館決定のいきさつ
一般に美術館とか博物館という機関は、月曜日が休館となっているところがほとんどである。旧館時代の石川県美術館も昭和47年までは月曜休館であり、私共同様兼六園の周辺にある各種博物館は、みなそうであった。
周知のとおり昭和40年代に入ってから日本経済が急成長し、国民の所得も増大して国内旅行が盛んとなってきた。金沢の街は、江戸時代以来の古き良きたたずまいを残していることから、旅行者のターゲットとなり、この頃より多くの観光客が訪れるようになってきた。
その頃の旅行のスタイルを見てみると、日曜日を挟んでの土・日・月の三連休という人が多かった。そこで月曜日は開館した方がよいのではないかということになり、金沢市内の各博物館は火曜日から金曜日の間に、それぞれが重ならないよう休館日を設定し、当館ではそれを金曜日としたのである。ところが、博物館は一般的に月曜休館という慣例が徹底していたためか、月曜日に開館しても入館者は少なく、かえって金曜日に休館していることで不評を買ってしまった。
たまたま金曜休館日に、何かの用事で故中西前知事が来館され、丁度その時に観光客らしいおばさん達が玄関に集まって、中をのぞきこむようにしていた状況を目にされた。そして声をかけられたところ、おばさん達は知事と知って、観覧できないかいう交渉が始まった。その時は作品の入れ換え作業中だということで、観覧できない理由を話し、引き取っていただいて一件落着したが、その後、知事からは年中無休で運営ができないかとの下問があった。そこで種々検討の結果、昭和50年4月より、公立としては珍しい年中無休(展示換えと年末年始を除く)の美術館となり、今日に至っている。
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