美術館だより
 第219号 平成14年1月1日発行


●美術館小史・余話18 
嶋崎 丞(すすむ) 当館館長

教育普及活動の開始(2)

 先号でマグシーバーガイド方式による解説活動について多少触れたが、いざ導入してみるとその作業が大変であった。
 どこの美術館や博物館でも、展示作業が完了するのは、大体オープンの前日であるのが一般的であり、私共の美術館でも全くそうである。
 従って展示作業終了後、観覧する順序通りに解説を録音し、それを編集して発信機にセットし終わるのが、いつもオープンの日の夜明けであった。

 その頃の美術館は、職員による宿直が勤務条件として課せられており、職員数が少なく、しかも男性は3名しかいなかったので、3日おきに宿直当番が回ってくる。 私はその宿直を専らこの解説と録音作業に当てることにしていたが、結局はいつも徹夜であった。
 そしてこの作業は、作品の展示替えを行うたびごとに実施しなければならない。
 これはえらいことを引き受けたと、つくづく思ったも のだった。

 こうした手造りによる解説活動も、前回触れたように、展示室が壁1枚で接している箇所は、両展示室の解説の磁波が入り交じって混信し、多くの利用者から不評を買う原因となった。
 それで一つの展示室では床の周囲にケーブル線を這わし、次の展示室では、天井裏にセットするなど、理工学の知識の全くない者が、夜中に天井裏へ上がっていろいろ工夫を凝らしてはみたが、どうしても改善することが出来ない。
 結果として5年足らずで廃止することになった。
 自分なりに一所懸命に努力した仕事であっただけに残念であった。
 しかし作品を見る眼を養い、解説をどのように行うかなど、その後の教育普及活動を実施していく上には、大いに役立ったことは事実であり、ある意味では非常に仕合わせであった。

 

 

 



現在当館で使用中の
音声ガイドシステム