婚礼調度とは、婚礼にあたって女性の家から嫁ぎ先へ持参された「嫁入り道具」のことです。それら化粧道具・文房具・遊戯具などは、蒔絵で家紋が散らされた豪華な装飾で、意匠も統一されていました。前田家では、徳川家からの輿入れが多く、将軍家からの輿入れに際しては、新しい御殿(御守殿)を新築して、姫君を迎えています。本特集で紹介するのは、十三代藩主斉泰に嫁いだ十一代将軍家斉の21女・偕子(溶姫)の婚礼調度ですが、溶姫を迎える際に建てられた御守殿門は、現在、東京大学にある「赤門」としてよく知られています。
◆厨子棚(ずしだな)
拾弐手箱・香盆・硯箱など、化粧道具・香道具・文房具を置きます。厨子棚は、平安時代の公家の調度に始まり、室町時代に黒棚とともにこの形式となったと考えられています。家具というものがほとんど発達しなかったわが国においては、数少ない伝統的調度といえます。
◆拾弐手箱
手箱は、平安時代に貴族の手回り道具を入れた箱に始まり、鎌倉時代以降は、化粧道具のみを納めるようになります。大円形の鏡箱(2合)など12合の箱が納められます。
◆歯黒箱・渡金箱
お歯黒の道具を入れる箱です。歯黒の原料である附子粉、銀製の歯黒次などが納められます。渡金には吉祥模様が入っています。
◆短冊箱
短冊を納めるための長方形の箱です。いつでも短冊に詩文が書けるように、懸子には硯・水滴・筆が納められています。