名物裂と調度  前田育徳会尊經閣文庫分館
  平成26年10月30日木曜日〜11月24日月曜・休日 会期中無休          


 毎年恒例の名物裂の展示を行います。「名物裂」とは、主に15〜16世紀頃にわが国に舶載された裂のうち、特に茶人や好事家たちに珍重され、茶器の仕覆や書画に用いられた裂をいいます。前田家では、三代利常の時代に、長崎にてそれらを求めたとされ、現在でも前田家伝来の名物裂は、その量と質で国内随一の豊かさを誇ります。これらは、東京と京都の両国立博物館にも分蔵されていますが、現在、本館に寄託されている育徳会所蔵の名物裂は金襴・緞子・間道・モールなど88種です。本特集では、うち金襴15種、緞子3種、錦1種、間道3種、モール1種の計23点と、名物裂で仕立てた能装束1領に、硯箱などの調度品を合わせて紹介します。
 2年ぶりの公開なる「双鳳丸文様金襴」は、尾をなびかせながら羽を広げた2羽の鳳凰が丸文様を構成した上品なデザインの裂で、その昔足利義政がこの裂で仕立てた装束で能「二人静」を舞ったと伝えられることから、「二人静金襴」とも呼ばれています。
 嘉永5年(1852)に仕立てられた能装束「色無金入蜀江形大丸紋唐織」の畳紙には、「古渡」の文字が記されています。「古渡」とは、名物裂の中でも特に古いものとして珍重された裂をいい、育徳会には、他にも能装束1領、佩楯に裂が用いられた甲冑が1領伝えられています。能装束や甲冑にまで名物裂が用いられるとは、前田家の豊かさがうかがえます。

No.  作 品 名  員 数
1 双鳳丸文様金襴(二人静金襴) 1枚
2 角龍文様金襴 1枚
3 小石畳地靈芝文様金襴(大燈金襴) 1枚
4 作土形花兎文様金襴 1枚
5 変り石畳文様金襴(大徳寺金襴) 1枚
6 入子菱繋ぎ地宝尽し文様金地金襴 1枚
7 鱗文様金襴(井筒屋金襴) 1枚
8 縞地八宝文様金襴(今春金襴) 1枚
9 桐唐草文様金襴 1枚
10 桐文様金襴(大内桐金襴) 1枚
11 雲繋ぎ宝尽し文様金襴(安楽庵金襴) 1枚
12 一重蔓牡丹唐草文様金襴 1枚
13 一重蔓牡丹唐草宝尽し文様金襴(大黒屋金襴) 1枚
14 桐唐草文様金地金襴 1枚
15 七宝斜格子小花散らしの縞文様金襴(蜀金金襴) 1枚
16 竜三爪唐草文様緞子(珠光緞子) 1枚
17 花七宝入り石畳文様緞子(遠州緞子) 1枚
18 花入り亀甲繋ぎ文様金入緞子(葛城緞子) 1枚
19 雑宝入り石畳雲龍丸文様錦 1枚
20 格子文様間道(青木類間道) 1枚
21 縞格子文様間道(望月間道) 1枚
22 縞に四葉段文様間道(船越間道) 1枚
23 花唐草縞文様モール 1枚
24 秋野歌書蒔絵小硯箱 1合
25 青磁二重鉢 1点
26 青磁輪花鉢 1枚
27 青磁八葉蓮華鉢 1枚
28 呉須赤絵平鉢 1枚
29 古九谷色絵中皿 5客
30 黒地若松蒔絵重箱 1個
31 梨子地菊水蒔絵提重 1個
32 唐銅四方式人形付大香炉 1合
33 白玉鼎香炉 1合
34 黒塗薄蒔絵文台・硯箱 1合
35 黒塗秋草蒔絵小文箱 1合
36 色無金入蜀江形大丸紋唐織 1領