;特別陳列 加賀藩の美術工芸(後期)
前田育徳会尊經閣文庫分館
    平成26年9月27日 土曜日〜10月26日 日曜日  会期中無休

 前々回の第2展示室特別陳列「北陸ゆかりの画聖たち」の紹介でもふれましたように、加賀の、京都と江戸との微妙な距離感は、幕藩体制に屈従を強いられた加賀藩の独自性を主張する重要かつ有効な方策として、文化政策の推進を促しました。加賀藩三代藩主の前田利常は、幕府から様々な圧迫を受けた京都の後水尾天皇を模範として、質・量ともに幕府を凌ぐ文化政策を打ち出しました。そしてその政策は、儒教や博物学的に深化されて五代藩主前田綱紀に継承されました。
 加賀藩の文化政策は、大きく収集と育成に大別されます。名品の収集は、大名の格式を対外的に印象付ける重要な意義を持っていました。前田家の収集は、日本の古筆や典籍類から、広く中国や西洋の文物にまで及んでいます。しかし、単に世界各地から名品を集めることにとどまらず、藩経営の一環として美術工芸の育成事業を行っている点に前田家の独自性があります。名工を招聘し、武具の制作や保守などで培われた技術の地盤を活用して、高い技術と洗練された美意識が融合した名作の数々が17世紀を中心に加賀藩から生まれました。そして前田家十六代利為侯が、前田家に伝来した文化遺産の保全を目的とした公益法人育徳財団を設立したことにより、第二次世界大戦後の混乱期にも貴重な文化財が散逸を免れ、今日に至っています。
 今回は「馬郎婦観音像」、「武家手鑑 上帖」、「牡丹獅子造小さ刀拵」(金具:伝後藤祐乗拵:本阿弥光甫)以上の重要文化財が久々の公開となります。どうぞご期待ください。


No 指定 作品名 作者名 員数 年代

1

重文 馬郎婦観音像         伝 李龍眠 1幅 元 13〜14世紀
2 重文 武家手鑑
 ※3帖のうち上帖、前後期で折り返し
  1帖 平安〜南北朝
12〜14世紀
3 重文 四季山水図   ※前期展示   伝 周文 6曲1双 室町15世紀
4 重文 四季花鳥図   ※後期展示 伝 雪舟 6曲1双 室町15〜16世紀
5 重文 牡丹獅子造小さ刀拵  金具:伝後藤祐乗 拵:本阿弥光甫 1口 金具 室町15世紀 拵 慶安2(1649)
6   後藤家歴代装剣小道具   1件11点
      (1) 倶利伽羅龍三所物 初代祐乗 1揃 室町15世紀
      (2) 濡烏二所物 初代祐乗 1揃 室町15世紀
      (3) 布袋二所物 初代祐乗 1揃 室町15世紀
      (4) 鯉魚三所物 二代宗乗 1揃 室町16世紀
      (5) 瓜花籠図三所物 二代宗乗 1揃 室町16世紀
      (6) 鶴亀橋三所物 三代乗真 1揃 室町16世紀
      (7) 松図二所物 三代乗真 1揃 室町16世紀
      (8) 蓑笠二所物 五代徳乗 1揃 桃山〜江戸
16〜17世紀
      (9) 龍虎二所物 六代栄乗 1揃 桃山〜江戸
16〜17世紀
     (10) 亀兎卦算三所物外 七代顕乗 1揃 江戸17世紀
     (11) 貳拾五匹獅子三所物外 九代程乗 1揃 江戸17世紀
7   老松蒔絵硯箱 清水九兵衛 1合 江戸17世紀
8   巌浪蒔絵真鳥羽箪笥 清水九兵衛 1棹 江戸17世紀
9   青貝敬字箪笥   1棹 江戸17世紀
10   黒塗布目引出絵替絵具箪笥 伝五十嵐道甫 1棹 江戸17世紀
11   達磨渡江図 狩野探幽 1幅 江戸17世紀
12   桃花美人図   1幅 江戸18〜19世紀
13   松下飲虎図 岸 駒 1幅 江戸19世紀
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