;特別陳列 加賀藩の美術工芸
前田育徳会尊經閣文庫分館
    平成26年9月27日 土曜日〜10月26日 日曜日  会期中無休

 今回は、久々に公開される重要文化財3点を紹介します。最初は前回写真を掲載した「馬郎婦観音像」です。『法華経』には、観音(観世音菩薩)はあまねく衆生を救うために、相手に応じて三十三の姿に変身すると説かれています。本作は、美女に姿を変えた観音の説話によるものです。唐時代の9世紀、中国のある町にどこからともなく美しい女性が現れました。町の若者たちはこぞってこの女性に求婚しますが、女性は3日間で『法華経』全二十八品をそらんずることを条件とします。馬家の若者がその条件を満たし、女性を花嫁に迎えることになりました。しかし婚礼の夜に花嫁は急死し、花嫁衣装を着たまま葬られました。数日後、老僧が現れ、花嫁を埋葬した場所に案内させます。
老僧が棺を開くと、中から金の鎖となった骨が出てきました。そこで老僧は、この女性は観音だったことを明かしました。今回展示される作品は、この説話に登場する女性のたおやかな美しさを見事に表現しています。その点が、筆者を李龍眠と伝えるゆえんと考えられます。
 次は、本阿弥光甫が加賀藩三代藩主、前田利常の命により制作した「牡丹獅子造小さ刀拵」です。本作は、室町時代に装剣金工で名を成した後藤家初代の祐乗作と伝えられる貴重な金具を、黒漆と研出鮫による拵に惜しみなく使用した大名好みの名品です。大名好みといえば五代藩主綱紀が作成し、十六代利為侯が改編した「武家手鑑」の上帖も注目されます。そこには、数少ない平清盛の自筆も収められています。


  指定 作品名 作者名 員数 年代

1

重文 

馬郎婦観音像         伝 李龍眠 1幅 元 13〜14世紀
2 重文  武家手鑑
 ※3帖のうち上帖、前後期で折り返し
  1帖 平安〜南北朝
12〜14世紀
3 重文  四季山水図   ※前期展示   伝 周文 6曲1双 室町15世紀
4 重文    四季花鳥図   ※後期展示 伝 雪舟 6曲1双 室町15〜16世紀
5 重文   牡丹獅子造小さ刀拵  金具:伝後藤祐乗 拵:本阿弥光甫 1口 金具 室町15世紀 拵 慶安2(1649)
6   後藤家歴代装剣小道具   1件11点
      (1) 倶利伽羅龍三所物     初代祐乗 1揃 室町15世紀
      (2) 濡烏二所物       初代祐乗 1揃 室町15世紀
      (3) 布袋二所物       初代祐乗 1揃 室町15世紀
      (4) 鯉魚三所物       二代宗乗 1揃 室町16世紀
      (5) 瓜花籠図三所物     二代宗乗 1揃 室町16世紀
      (6) 鶴亀橋三所物      三代乗真 1揃 室町16世紀
      (7) 松図二所物       三代乗真 1揃 室町16世紀
      (8) 蓑笠二所物       五代徳乗 1揃 桃山〜江戸
16〜17世紀
      (9) 龍虎二所物       六代栄乗 1揃 桃山〜江戸
16〜17世紀
     (10) 亀兎卦算三所物外    七代顕乗 1揃 江戸17世紀
     (11) 貳拾五匹獅子三所物外  九代程乗 1揃 江戸17世紀
7   老松蒔絵硯箱 清水九兵衛 1合 江戸17世紀
8   巌浪蒔絵真鳥羽箪笥 清水九兵衛 1棹 江戸17世紀
9   青貝敬字箪笥   1棹 江戸17世紀
10   黒塗布目引出絵替絵具箪笥 伝五十嵐道甫 1棹 江戸17世紀
11   達磨渡江図 狩野探幽 1幅 江戸17世紀
12   桃花美人図   1幅 江戸18〜19世紀
13   松下飲虎図 岸 駒 1幅 江戸19世紀
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