「春の優品選 −花鳥の美−」  
前田育徳会尊經閣文庫分館
 前期 平成26年3月27日(木)〜4月15日(火) / 後期 平成26年4月20日(日)〜5月18日(日)

 例年のことですが、日本人の心を一喜一憂させる「桜」の季節が過ぎゆき、鮮やかな新緑が青い空に映える初夏へと移り変わろうとしています。三月から始まった絵画や工芸品に描かれた花鳥の世界の特集展示ですが、後期を迎えました。今月号で紹介する文様は「牡丹唐草文」の作品です。牡丹はその豪華で美しい姿から「百花の王」として愛でられ、「富貴」の象徴として絵画や工芸品に描かれてきました。牡丹は蔓植物ではありませんが、唐草文と組み合わせることで、牡丹の持つ富貴や吉祥的な意味合いが永続するようにという願いが、こうした表現を生み出してきました。名物裂(めいぶつぎれ・主に中国の宋・元・明・清の時代に製織されて日本に輸入された染織品)のなかでも「金襴」に、「牡丹唐草文」が最も多く、またそのバリエーションも様々です。金襴は金箔糸を用いて文様を織り出した織物で、中国では織金と呼ばれ、宋代に始まったと考えられています。その豪華さから名物裂の中で最も尊ばれています。文様は花の大きさにより「大・中・小」があり、蔓には一重・二重、さらには地文様の部分にも金箔糸を用いた金地金襴など、その表現はまさに牡丹のごとく豪華な世界です。日本人の牡丹への憧憬は、中国文化への憧憬にほかなりませんが、「深見草」や「二十日草」という日本独自の呼び名が付けられて、和歌にも詠まれています。

No
作品名 作家名等 制作年 員数  
1
林和靖・花鳥図 山本梅逸 江戸19世紀 3福  
2
梅図(御臨幸記念) 川端玉章ほか 明治43年1910 1幅  
3
越中愛本橋図 佐々木泉玄 江戸19世紀 1幅  
4
鷹狩図絵巻 六代梅田九栄 江戸18世紀 4巻のうち2巻(春・夏) 前期春・後期夏展示
5
鳥画帖   江戸18世紀 3帖のうち1帖 前後期で場面替
6
犀角梅花彫筆洗     1個  
7
黒塗村梨子地桜寿帯鳥文蒔絵鞍   江戸/明暦2年1656 1具  
8
牡丹唐草文銀象嵌鐙 村沢國氏 江戸18世紀 1双  
9
葵花菱文銀象嵌鐙 永國 江戸18世紀 1双  
10
作土形草花文様金襴(大鶏頭金襴)   宋10〜13世紀 1枚 前期
11
雲珠繋ぎ鳥丸文様金襴(雲雀金襴)   明14〜17世紀 1枚 後期
12
変り鱗地一重蔓牡丹唐草文様金地金襴   明16〜17世紀 1枚 前期
13
卍字入り入子菱繋ぎ地一重蔓牡丹唐草文様金地金襴   明14〜17世紀 1枚 後期
14
一重蔓牡丹唐草文様金襴   明14〜17世紀 1枚 前期
15
入子菱繋ぎ地二重蔓牡丹唐草文様金地金襴   明15世紀 1枚 後期
16
入子菱繋ぎ地二重蔓牡丹唐草文様金地金襴   明14〜17世紀 1枚 前期
17
雲鶴文様綾織(御朱印裂)   明14〜17世紀 1枚 後期
18
青貝梅図香盆   明16世紀 1枚  
19
溜塗鎗金鳳凰文長盆   明16世紀 1枚  
20
堆黒鳳凰紋軸盆   明16〜17世紀 1枚  
21
漆絵草花禽虫図絵替角香盆   明16世紀 2枚  
22
漆絵螺鈿草花文食篭   明15世紀 1合  
23
箔絵花鳥文壷   明16〜17世紀 1個  
24
蒔絵三十六歌仙花卉文提重   江戸18〜19世紀 1個  
25
紫檀鷹蒔絵刀掛   江戸18〜19世紀 1基  
26
七宝花菱蒔絵花台   江戸17世紀 1個  
27
蝶蒔絵面箱   江戸17世紀 1面  
28
紫地牡丹折枝に蝶模様長絹   江戸/万延元年1860 1領 前期
29
花色地金唐花唐草模様水衣   江戸17世紀 1領 後期
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