新紀元 革新の視座
−加賀谷武、木下晋、久世建二、庄田雷寛、蓮田修吾郎の創造−
石川の美術工芸を語るとき、伝統と写実または具象性という言葉が表に出ることは否めませんが、金沢美術工芸大学や各種の工房では新しい造形を求める作家達が研鑽を積み、旺盛な活動を展開していることも事実です。本展では「伝統と革新」、「絶えざるメッセージ」をテーマとし、新たな表現世界を求めて創作を続ける、そして続けた、石川ゆかりの作家5名による絵画・造形作品をご覧いただきます。
出品作家は、空間造形の、鉛筆によるリアリズムを極める、陶による造型に挑む、カラフルな線と色面で世相を描く、金属造型の先駆者で日独の文化交流に努めたの5作家です。
加賀谷は小矢部市出身。金沢美術工芸大学で金工を学んだ後、フレームのみ作品や、室内や屋外で丸太を木枠で囲むなど、実と虚をテーマに前衛的な作品を発表し、近年はロープを用いたインスタレーションで、屋内外の空間を新たに構成し直すダイナミックな創作を展開しています。
木下は富山市出身で、今年3月まで金沢美大大学院教授を務めました。独立した技法としての鉛筆画を確立し、ペンシルワークと名づけ、対象の深層に迫るリアリズムの絵画空間を表出します。
あわら市出身の陶芸家で、今年3月まで金沢美大学長を務めた久世は、陶による造型の可能性を「痕跡」や「落下」などの各テーマのもとに追求し、アメリカの9.11テロ以後、十字架型や人型の作品数十体によるインスタレーションを行っています。
金沢出身の庄田雷寛(常章)はカラフルな色面と思考の軌跡を示すような線がからみあう平面構成で、現代の世相を描きます。鳥獣戯画や信貴山縁起絵巻、浮世絵、漫画など、日本に脈々と続くひょうげた線画の世界に連なるものと言えます。
同じく金沢出身の蓮田は県立工業学校卒業後、東京美術学校に進んで鋳金を学びますが、その後の歩みは、伝統的な工芸の枠を超え、金工が用を離れた純粋美術として成り立つことを実証し、金属造型の世界を確立するものでした。
伝統と具体性を好む石川の美術風土は、創作にあたり確かな手技と優美な仕上がりを求めます。本展出品の作家達はこの要望に応えつつ、既成概念を超えた創造を成し遂げ、絶えずメッセージを社会に向けて発信しています。蓮田の公共の場に建てられた巨大モニュメント、9.11そして、3.11に呼応する加賀谷、木下、久世、庄田の作品は、時代と共に歩む作家の姿を明示しているといえましょう。
各作家の創作の軌跡を、企画展示室3室と2階コレクション展示室の第3、第4展示室、1階ロビー、そして本多の森公園でのロープ・インスタレーションなどにより、石川美術の重層性をご覧いただきます。
開館時間 |
午前9時30分−午後6時
※入場は閉場時間の30分前まで |
早朝開館 |
5月3日(土)〜5月6日(火)は午前8時30分開館。早朝割引あり。 |
休館日 |
なし、会期中無休 |
主催 |
石川県立美術館 |
お問い合わせ |
石川県立美術館 076(231)7580 |
観覧料
観覧料 |
一般 |
大学生 |
小中高生 |
当 日 |
1000円 |
600円 |
300円 |
団 体 |
800円 |
500円 |
200円 |
※団体は20名以上。県立美術館友の会会員は団体料金でご覧になれます。
イベント案内 (講演会・対談・ワークショップ)
講演会・対談 |
会場:石川県立美術館ホール 定員209名 先着順・申込不要 時間:午後1時30分〜3時 |
4月20日(日) |
講師:久世建二 「土のかたち−創造の現場から」 |
5月 3日(土) |
講師:木下 晋、松居 直(福音館書店相談役・児童文学者)
「絵本作家 木下 晋」 |
5月 6日(火・休) |
講師:嶋崎 丞 「蓮田修吾郎の世界」 |
5月18日(日) |
講師:庄田雷寛(常章)「画鬼(ガキ)」 |
ワークショップ |
会場:美術館講義室 定員30名 往復ハガキ申込
時間:午後1時30分〜3時 |
5月11日(日) |
講師:加賀谷 武「空間をきる」
空間とは何かを、参加者の制作と加賀谷氏の講義で考察します。 |
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