日本最古の年中行事、正月。現代も私たち日本人は来る年の幸福を願い、清新な気持ちで新年を迎える準備にあたります。展示室も少しの華やぎと、清新さを備えた作品群で、お客様をお出迎えします。
　日本画の部門からは、横山大観「長江の朝」を出品します。本作は金地の屏風に水墨で描かれています。金地の余白を、長江の流れと朝日の輝きに見立てた雄渾な一作は、新年を彩るに相応しい作品といえるでしょう。その他に最後の浮世絵師、伊東深水の数少ない男性像「酔燕台翁」、安田鞍彦「飛鳥をとめ」などを展示します。
　洋画からは村田省蔵「芽吹き」を紹介します。本作は一昨年に開催した「村田省蔵展」に出品された一作
です。描かれているのは稲架木。稲架木は村田省蔵が好む題材の1つです。稲を架けるために人工的に植えられたもので、豊穣を予感させる題材です。さらに稲架木には緑が芽吹き、空にはプラチナを使い、春らしさの演出に一役買っています。
　彫刻では、当館のブロンズ作品中1番の大物で、畝村直久の代表作といえる「和」が展示されます。「知・情・意」を統合する「和」をテーマとした3人の女性群像は、作者が53才で急逝する前年に制作した渾身の作です。その他吉田三郎の「寿老人」も展示します。小品ながら写実に徹した本作は、いわゆる置物とは一線を画し、人格さえも感じさせる一作です。