特集 『木版の美』 / 油彩画  第3展示室
  平成25年11月20日(水)〜12月15日(日) 会期中無休          


木版の美

 平成17年に久世靖氏より一括寄贈を受けた3016枚におよぶ浮世絵版画コレクションの中から、明治に活躍した浮世絵師・小林清親と、大正「新版画」の創作に力を注いだ伊東深水、橋口五葉、川瀬巴水等の作品を展示します。
 江戸時代に庶民に愛された浮世絵は、明治に入り新たな展開をみせます。小林清親の木版画は、前代の浮世絵と同じく分業体制をとりながら、西洋の遠近法や陰影法の効果を取り入れています。今回展示する「御茶水蛍」という作品は、神田川での蛍狩りの様子を描いています。夜の湿った大気を細やかなグラデーションで表現し、その中にぼんやりと浮かび上がる舟の灯りと点在する蛍の光が、詩情豊かな画面をつくり上げています。さまざまな情景の光をモチーフにした清親作品は「光線画」と呼ばれて人気を博しますが、もともと印刷物としての役割が大きかった浮世絵は、写真や石版画などの目新しい技術に勝てず、一旦衰退への道をたどりました。
 そして大正期、自画・自刻・自摺の創作版画運動が展開される中、新しい時代の浮世絵を目指した版元の企てにより、新版画が誕生します。新版画は、わざとむらのある摺り方をしたり、同じ色を何度も摺り重ねて色に深みを持たせたりと、画期的な技法・表現で制作され、木版画の可能性を広げてゆきました。
今回の特集で、明治・大正木版画のもつ独特の魅力を是非、ご堪能いただければと思います。


No.

作 品 名

作 者 名

制 作 年

初出展受賞

形体

 木版の美
1

新美人十二姿・口紅

伊東深水

大正11年(1922)

 

2

現代美人集第一輯・五月雨

伊東深水

大正11年(1922)

 

3

薄雪

鏑木清方

昭和6年(1931)

 

4

牛堀の雪景色

川瀬巴水

昭和5年(1930)

 

5

厳島の雪

川瀬巴水

昭和7年(1932)

 

6

御茶水蛍

小林清親

明治9年(1876)

 

7

梅若神社

小林清親

明治11年頃(c.1922)

 

8

滝の川の図

小林清親

明治11年(1922)

 

9

東京両国百本杭暁之図

小林清親

明治12年(1879)

 

10

川口鍋釜製造図

小林清親

明治12年(1879)

 

11

本町通夜雪

小林清親

明治13年(1880)

 

12

宇久津

高橋弘明

昭和5年頃(c.1930)

 

13

裸婦と猫

高橋弘明

昭和5年頃(c.1930)

 

14

長襦袢

鳥居言人

昭和4年(1929)

 

15

鳥居言人

昭和4年(1929)

 

17

口紅

鳥居言人

昭和4年(1929)

 

18

髪すき

鳥居言人

昭和8年(1933)

 

16

湯がへり

鳥居言人

昭和8年(1933)

 

19

浴後の女

橋口五葉

大正9年(1920)

 

20

手拭いを持てる女

橋口五葉

大正9年(1920)

 

21

たそがれ

山川秀峰

昭和3年(1928)

 

 油彩画
1 毛皮の椅子 円地信二 昭和59年(1984) 第70回光風会展
2 教会 鴨居 玲 昭和53年(1978) 第32回二紀展
3 ETUDE(A) 鴨居 玲 昭和53年(1978) 第1回明日への具象展
4 虹の星 田井 淳 平成18年(2006)  
5 立つ裸婦 高光一也 昭和27年(1952)  
6 馬に凭る(B) 高光一也 昭和55年(1980) 第66回光風会展
7 山間 塗師祥一郎 昭和54年(1979) 第11回改組日展
8 アルバニアの老人 硲伊之助 昭和40年(1965)  
9 見透せぬ窓 前田さなみ 平成9年(1997) 第51回女流画家協会展
10 アコーディオン 南 政善 昭和10年(1935) 第二部会展 特選・朝日文化賞
11 裸女達に捧ぐ 宮本三郎 昭和44年(1969) 第23回二紀展
12 牧歌 宮本三郎 昭和47年(1972) 第30回二紀展(昭和51)
13 斑雪 村田省蔵 平成20年(2008) 第40回改組日展