古今東西、女性を美の対象として鑑賞することは人類の常であり、文化であったといえます。古来よりそれをテーマに、多くの作品が作られてきました。女性美の本質は変わらないのかも知れませんが時代や土地、文化などにより、美の基準は微妙な変化を見せます。特にそれぞれの国の持つ文化が、固有の女性美の概念を形成したことは認められるところでしょう。
ご存知の通り、日本には女性美を表現した「美人画」と呼ばれる作品群があります。一般的に美人画とは、特定された人物の人格を描くのではなく、類型的に捉えた女性美をテーマとした絵画といえるでしょう。江戸時代の浮世絵に端緒をみるこのジャンルが、盛んに描かれたのは明治から戦前にかけてです。東は鏑木清方や伊東深水、西は上村松園、北野恒富らが美人画家とよばれ、彼らが描く女性は当時の人々を魅了しました。
しかし美人画家とよばれた人たちが鬼籍に入ったこともありますが、戦後美人画は衰退します。この頃ミスコンテストが台頭し始めますが、時期が重なるのは偶然ではないでしょう。作家達は女性を日本人の類型的な美から解き放ち、人間の本質を表現することを探り始めたのです。
今回、第6展示室では明治・大正期の版画、そして北野恒富や上村松園らによる戦前期の美人画から戦後日展系作家による女性像まで、当館所蔵の女性像を多様な視点で紹介します。