工芸作品にほどこされる意匠は、わが国の風土を反映したものが多く見られます。とりわけ、四季折々に多彩な様相を呈する自然は、作家にとって、豊かな創造力をかき立ててくれる存在であるということができましょう。一口に自然といっても、その中には草や木、花などの植物、虫、鳥、動物などの生きもの、さらには雲、雨、大気などの自然現象も含めて様々です。今回の特集展示では、秋にちなんだ植物文様を表現した作品を、まとめて展示いたします。
　従来の展示では、陶磁、漆工、染織、金工など、技法・材質による分類によって、それぞれまとめて配置していましたが、本展では同じモチーフを意匠化した作品を、とくにジャンルにこだわらず並べるような形で展示構成してみたいと思います。たとえば、『桔梗』の意匠が美しい、陶芸の吉田美統作《釉裏金彩秋草譜飾鉢》と漆工の中野孝一作《秋草蒔絵小箪笥》、『稲穂』の意匠に秋の抒情が漂う陶芸の竹田有恒作《釉裏金彩稲穂波文鉢》と漆工の田崎昭一郎作《稲穂蒔絵漆筥》、『ススキ』が肌に冷たい秋風を感じさせる漆工の大場松魚作《平文薄の棚》・池田喜一作《枯尾花文色紙箱》と陶芸の戸出政志作《色絵秋麗飾壺》などをあげることができます。次第に深まる秋の風情を、作品に感じ取っていただければ幸いです。