尊經閣文庫名品展 —国宝『水左記』を中心に—
前田育徳会尊經閣文庫分館
    平成25年7月25日(木)〜9月9日(月)  会期中無休

 恒例の尊經閣文庫の名品を紹介するシリーズ展示で、今回は平安時代後期の公卿、左大臣源俊房(1035〜1121)自筆の日記『水左記』を公開します。『水左記』の名称は、源の偏「水」と左大臣の「左」を合わせたものですが、別名として、家名の「土御門」より『土記』『土佐記』や、邸のあった「堀河」より『堀河左府記』とも称さています。現在、康平5年(1062)〜応徳3年(1086)に至る間と、嘉承2・3年(1107・8)が残されていて、俊房自筆本は八巻が伝存し、宮内庁書陵部に六巻、前田育徳会に二巻が所蔵されています。他に記録の少ない後冷泉天皇・後三条天皇・白河天皇三代にわたる時代の宮廷社会を簡潔に記述しており、その資料的価値の高い記録です。また、能書家としても著名な俊房の筆跡を伝える貴重な作品でもあります。前田育徳会本二巻のうち、一巻は承暦元年(1077)の秋冬(9月〜12月)の巻で、もう一巻は永保元年(1081)の秋冬の巻です。前者は、俊房が43歳、正二位権大納言の時であり、疱瘡の流行や、法勝寺金堂・阿弥陀堂の落慶法要などが記載され、後者は、俊房が47歳、正二位権大納言兼太皇太后宮大夫の時であり、興福寺、延暦寺と園城寺の対立など寺院間の闘争の激化といった時代の様相が記載されています。いずれも具中歴(平安時代に広く用いられた漢字の暦本。暦日の下に歳位・星宿・干支(えと)・吉凶などを注記。日ごとに2・3行の余白を設けてあり、公家らが日記として利用。)に記載され、記事が長い場合は紙背にまで記載されています。なお、国宝『水左記」は20年ぶりの公開です。二巻を巻替えをしながら全期間を通して展示いたします。そのほかに公家の日記として、平安時代の藤原実資の『小右記』(重文・鎌倉時代の模写本)、武家の日記として鎌倉時代の太田康有自筆『建治三年記』(重文)などもあわせて紹介します。


No 作品名 筆者等 員数 時代 備考
1

国宝 水左記
*付属書類9点を含む

源俊房自筆 2巻 平安時代 承暦元年(1077)
永保元年(1081)
会期中巻替
2 水左記  模写本   2巻のうち巻第1 江戸時代 宝永5年頃(1708)  
3 水左記  古写本   1冊 室町 16世紀  
4 桑華字苑・桑華書志 前田綱紀 83冊・3帖のうち第46冊 江戸時代 元禄3〜享保5年(1690〜1720)   
5 書札類稿   31冊のうち第4冊・第24冊 江戸時代 17〜18世紀   
6 梅?集   1冊 江戸 寛文7〜享保9年(1667〜1724)  
7 尊卑分脈   11帖のうち第3帖 室町 16世紀  
8 河海抄 伝四辻義成 巻第1 室町 14世紀 後期に展示
9 河海抄 写本   20冊のうち第1冊   前期に展示
10 重文 小右記   32巻・5巻のうち巻第21 平安〜鎌倉 12〜13世紀 前期に展示
11 小右記 写本   10冊のうち第10冊    
12 重文 建治三年記 太田康有自筆 1巻 鎌倉時代 建治3年(1277) 後期に展示
13 尊経閣叢刊 建治三年記   1巻 昭和27年(1952)  
14 斉藤基恒日記   3冊のうち第1冊 室町〜江戸時代 16〜17世紀  
※前期=7月25日〜8月17日 後期=8月18日〜9月9日

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   古九谷とその展開
第2展示室
 平成25年 7月25日(木)〜9月9日(月) 会期中無休

 加賀藩三代藩主前田利常は、政治的に屈従を強いられた無念を晴らすかのように、文化政策において幕府に対抗心を燃やした大名でした。そして名品の収集や名工の招聘とともに利常が意欲的に取り組んだのが、江戸ではできない色絵磁器の生産でした。中国で確立された色絵磁器の技法は徐々に日本にも伝えられ、十七世紀にはいると本格的な生産体制が整備されていきます。前田利常は九州の有田地区の動向にいち早く注目し、人的交流によって技術の移転をはかり、やがて十七世紀半ば、加賀南部の九谷の地に色絵磁器の生産拠点を確立します。そしてそれから約半世紀間に、今日古九谷と呼ばれている独創的な色絵磁器がそこで生産されます。

 古九谷色絵の特質は、豪放華麗な意匠感覚にあります。古九谷の色絵、青手の両様式には、中国の景徳鎮五彩や華南三彩の影響が認められますが、意匠感覚は斬新であり、日本や中国のみならず、西洋の文物も熱心に参照しています。こうした姿勢が前田利常の文化人としての「好み」であり、また幕府に対する反骨精神の表明と考えることができます。このように、古九谷の意匠は加賀の文化風土と密接に結びついて誕生し、若杉や吉田屋など再興九谷諸窯にも継承され、さらに明治時代以降今日に至るまで当地の陶芸家の精神的支柱となっています。

 本展は「古九谷とその展開」として、短期間に花開いた古九谷の独創的な表現世界と、再興九谷諸窯による継承・翻案の軌跡を、古九谷二十五点と再興九谷十一点の展示によって概観したいと思います。


番号 指定 作品名 区分/作者名  年代  
1 石川県文 色絵布袋図平鉢 古九谷 江戸17世紀  
2 石川県文 色絵鳳凰図平鉢 古九谷 江戸17世紀  
3 石川県文 色絵鶉草花図平鉢 古九谷 江戸17世紀  
4 石川県文 色絵鶴かるた文平鉢 古九谷 江戸17世紀  
5 石川県文 色絵百花散双鳥図平鉢 古九谷 江戸17世紀  
6 石川県文 青手樹木図平鉢 古九谷 江戸17世紀  
7 石川県文 青手桜花散文平鉢 古九谷 江戸17世紀  
8   色絵宝尽鷺文平鉢 古九谷 江戸17世紀  
9   色絵牡丹文平鉢 古九谷 江戸17世紀  
10   色絵石畳双鳳文平鉢 古九谷 江戸17世紀  
11   色絵海老藻文平鉢 古九谷 江戸17世紀  
12   青手葡萄図平鉢 古九谷 江戸17世紀  
13   青手栗波文平鉢 古九谷 江戸17世紀  
14   青手海浜家屋図平鉢 古九谷 江戸17世紀  
15   青手菊文台鉢 古九谷 江戸17世紀  
16   青手松竹梅文平鉢 古九谷 江戸17世紀  
17   青手竹葉図平鉢 古九谷 江戸17世紀  
18   青手老松図平鉢 古九谷 江戸17世紀  
19   青手牡丹図平鉢 古九谷 江戸17世紀  
20   色絵鴛鴦流水図平鉢 古九谷 江戸17世紀  
21   色絵亀甲流水図平鉢 古九谷 江戸17世紀  
22   色絵花鳥図台鉢 古九谷 江戸17世紀  
23   色絵四葉座十字文平鉢 古九谷 江戸17世紀  
24   色絵壺割花鳥図平鉢 古九谷 江戸17世紀  
25   色絵唐子山水図平鉢 古九谷 江戸17世紀  
26   色絵牡丹唐獅子図平鉢 若杉窯 江戸19世紀  
27   色絵唐獅子牡丹図平鉢 若杉窯 江戸19世紀  
28   色絵万年青図平鉢 吉田屋窯 江戸19世紀  
29   色絵象人物図角皿 吉田屋窯 江戸19世紀  
30   色絵麒麟図輪花鉢 吉田屋窯 江戸19世紀  
31   色絵龍虎図平鉢 宮本屋窯 江戸19世紀 個人蔵
32   色絵山水図卓 粟生屋源右衛門 江戸19世紀  
33   色絵石畳文古九谷写平鉢 蓮代寺窯 江戸19世紀  
34   色絵桐鳳凰文平鉢 松山窯 江戸19世紀  
35   色絵翡翠図平鉢 松山窯 江戸19世紀  
36   色絵草花文深鉢 正院焼 江戸19世紀 個人蔵

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