日本海に大きく突き出た能登半島は、海を挟んで大陸・半島と向き合う位置にあることから、古くには我が国の表玄関側として往時の先進文化を伝える地区であるとともに、日本海航路の拠点地域としてもあることから、故郷を離れ海を越えて各地に雄飛する進取の気性も窺える地区であると言えましょう。
能登地区の永い歴史と人々の営みに育まれてきた今日この地は豊かな自然と伝統文化を伝え、我が国の原風景を残す地区の一つとなっています。
さて能登地区は今日、彫刻に繋がりまた直接関係する伝統工芸や産業、美術学校が見当たらないにも拘わらず、能登地区出身で全国区で活躍する作家や、現在能登を拠点に活動中の作家、さらには能登出身の物故彫刻家を含め、多様で個性的な彫刻家の活動の展開が見えるものとなっています。そこでは作家それぞれが自分の素材と向かい合って紬出すような独自の展開が見えるもので、能登地区の風土のような一見、寡黙で地味ながらも素朴で確かな存在感を漂わせているものが多く見えます。
昨今の震災以来、改めて地域と人々の生活・文化を含めた繋がりに関心が高まってきており、各地区においても美術による絆の深化が期待されるなか、特に、野外の展示をも持つ彫刻分野の活動は、今後益々期待されるものがあるといえましょう。
展示では、石・木・塑造・金属の素材別に、現在活動中の作家作品と並び、能登地区出身の物故作家の作品を取り混ぜ展示するもので計20作家、合計29件の作品を展示するものです。