特別陳列 尊經閣文庫名品展
   
−職人歌合の世界−
前田育徳会尊經閣文庫分館
 平成24年 9月1日(土)〜10月21日(日) 会期中無休


 職人歌合とは、様々な職人が左右に別れて番いをつくり、それぞれが和歌を詠み、その優劣を定める判者 も職人が行うという文学的な遊戯の歌合に、職人像が描きこまれたものです。鎌倉時代の念仏会や放生会 のおりに開催された『東北院歌合』・『鶴岡放生会職人歌合』、室町時代に成立した『三十二番職人歌合』・ 『七十一番職人歌合』が、歌合絵巻として今日に伝えられています。
 『七十一番職人歌合』とは、142種の職人に仮託して、七十一番の取り組みで、月と恋の歌題のもとに、284首の和歌を競う中世後期の最大 規模の歌合です。その序文・歌・画中詞等から明応9年(1500)頃に成立した歌合と考えられています。
 前田家の『七十一番職人歌合』は、加賀藩三代前 田利常の箱書より、慶安元年(1648)春に、後水尾上皇より下賜されたもので、絵の筆者は不明です が、上巻(序〜第二十三番)は高倉永慶、中巻(第二十四〜四十六番)は飛鳥井雅章、下巻(第四十七〜 七十一番)は白川雅陳が歌と詞書を記しており、この三者の生没年より正保年間(1644〜48)頃に模写されたものと思われます。利常はこの歌合絵巻を納めるための「蓮蒔絵箱」を加賀蒔絵の祖といわれる 五十嵐道甫に作らせて、二代前田利長の菩提所である高岡の瑞龍寺に同年7月20日に寄進しましたが、明治時代に前田家に戻っています。
  もう一点の『七十一番職人歌合』は、貞享元年(1684)頃に、『鶴岡 放生会職人歌合』は延宝年間(1673〜81)頃の模写本で、いずれも五代前田綱紀が収集するために模 写させたものと思われます。
 本展は二種類の『七十一番職人歌合』と、『鶴岡放生会職人歌合』の初めての全貌公開です。  

No 作 品 名 筆 者 等 員数 時 代
1 七十一番職人歌合 上巻詞書 高倉永慶
中巻詞書 飛鳥井雅章 3巻 江戸(17世紀)
下巻詞書 白川雅陳
2 蒔絵蓮図箱(職人歌合箱) 五十嵐道甫 1合 慶安元年(1648)
3 七十一番職人歌合 3巻 貞享元年(1684)頃
4 鶴岡放生会職人歌合 1巻 延宝年間(1673〜81)頃
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