桃山時代末期の慶長年間( 1568〜1614)、京都に新しい造形運動が生まれました。その特徴は、平安時代末期の12世紀に制作された「平家納経」や「源氏物語絵巻」に代表される善美を尽くした造形を、新たな時代感覚のもとに復興することでした。
中心となった人物は本阿弥光悦(1558〜1637)で、能書家として活躍する一方本の
装丁や漆芸、陶芸なども手がけるなど、今日で
言うアートディレクター的な仕事をしていたよ
うです。そして、光悦が和歌などを揮毫する料
紙の装飾を担当していた一人が俵屋宗達(生没
年未詳)でした。
宗達は扇や色紙に絵を描くなど、絵屋を主宰
する町絵師だったと考えられています。しかし
千利休の嗣子、少庵を振舞に招くなど高度な教
養もありました。やがて宗達は光悦との共同作
業を離れて独立した画人として活躍し、「風神
雷神図」をはじめ多くの個性あふれる名作を描
きました。その宗達が世を去って百年余り後
に、尾形光琳(1658〜1716)が京都の
呉服商「雁金屋」の次男として生まれました。
光琳は光悦や宗達に私淑し、生来の卓越したデ
ザイン感覚で先人の作風を様式化しました。そ
こで今日、光悦に始まる一連の造形運動が「琳
派」と総称されるようになりました。今回の特
集では、これら三人による書跡、絵画、漆芸の
優品を展示します。
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