絵合は「えあわせ」と読み、源氏物語第十七帖の題名として知られています。源氏物語の「絵合」は
、冷泉帝の寵愛をめぐり、源氏が後見する梅壺女御と、源氏のライバル頭中将の娘との対決の場面に用い
られました。絵合わせという雅な遊びを借りて、女同士の、ひいては後ろ盾となっている男達の熾烈な戦い
が展開されたのです。
さて、古来宮中の遊びでは競い合うことを意味した「合わせ」ですが、本特集では勿論対決を意味するも
のではありません。取り合わせ、引き合わせ、抱き合わせなど、「合わせ」が下接する言葉は例に事欠きま
せんし、反りを合わせる、結び合わせる、帳尻を合わせるなど、「合わせる」の用例は豊富で、使い方によっ
て化学反応のように様々な感覚を生み出します。ここでは、複数の日本画を同時に鑑賞することで、一点
ずつでは見えなかった視点が見えてきたり、感じることのなかった新たな感覚を味わえることを期待してネ
ーミングしてみました。しかし、このような鑑賞方法は目新しい物ではなく、展覧会では一つの作品が、テ
ーマや文脈に合わせ、持つ意味を変えますし、茶道では寄付と茶室の掛け物を取り合わせることは楽しみ
のひとつともいえます。
「今様絵合(いまようえあわせ)」とした近現代日本画の展示が、鑑賞される皆様に新たな化学反応を起こ
すことを期待するものです。
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