百万石大名の装い—甲冑・陣羽織—

前田育徳会尊經閣文庫分館
  平成24年 5月17日(木)〜7月16日(月/祝) ※6月11日(月)〜13(水)展示替えのため休室     

 前号の美術館だよりで概要をお知らせしましたが、今年は、五代藩主前田綱紀の甲冑と陣羽織、並びに「軍装図録」を中心に展示します。「軍装図録」とは、文化二年(一八〇五)に牧昌左衛門が、初代利家から十一代治脩まで各代の甲冑や陣羽織等を四帖に収録したものですが、そのなかでも五代綱紀の「軍装図録」のみが、唯一単独で一帖に仕立てられています。この図録とともに現在前田育徳会が所蔵する綱紀の甲冑(一点)と陣羽織(五点)をあわせて展示しますので、武人綱紀の装いの美学を総覧ください。学者大名といわれる綱紀ですが、幅広い文化への造詣が、こうした装いにも象徴的に表れています。これまでは、十四代慶寧所用と伝わっていた「緋羅紗更紗梅紋陣羽織」が、綱紀の「軍装図録」に掲載されている陣羽織のように思われますので、あわせて展示します。江戸時代前半(十七世紀から十八世紀前半)に渡来した更紗(色鮮やかな文様が染められたインド製の木綿布)は、絹織物を主とする渡来裂である「名物裂」にも比肩するほど憧憬されました。前田家では三代利常が「名物裂」を収集していますが、おそらくこの更紗もそうした一連の収集と思われます。また、六代吉徳の甲冑にも名物裂の錦が使用されております。江戸時代をリードした藩主たちのファッションセンスをお楽しみください。

番号 作品名 伝来 数量 作家名等 制作年
1 唐桑雲龍彫鞍   1   江戸/元禄9年1696
2 与四郎象眼鐙   1 伝与四郎 江戸17世紀
3 金銀障子象眼鐙   1   江戸18世紀
4 銀牡丹唐草象眼鐙   1 村沢國氏 江戸18世紀
5 銀葵花菱紋象眼鐙   1 永國 江戸18世紀
6 銀霞ニ雲象眼鐙   1 村沢 国 江戸18世紀
7 銀瓢箪象眼鐙   1 木坂重宗 江戸18世紀
8 錠羽形甲冑 五代綱紀所用 1   江戸17世紀
9 黒塗筋十二間甲冑 六代吉徳所用 1   江戸18世紀
10 鉄十六間甲冑 八代重熈所用 1   江戸18世紀
11 黒塗張掛シコロ甲冑 十代重教所用 1   江戸18世紀
12 菖蒲革包頭巾甲冑 十一代治脩所用 1   江戸18世紀
13 黒羅紗鳴渡月猩々緋波白羅紗陣羽織 五代綱紀所用 1   江戸17世紀
14 黄羅紗下紅蕨手紋陣羽織 五代綱紀所用 1   江戸17世紀
15 黒白羅紗鱗形下紅松皮菱陣羽織 五代綱紀所用 1   江戸17世紀
16 無地黄羅紗陣羽織 五代綱紀所用 1   江戸17世紀
17 黒羅紗猪目紋陣羽織 五代綱紀所用 1   江戸17世紀
18 黒羅紗鳴渡月緋羅紗波白羅紗陣羽織 六代吉徳所用 1   江戸18世紀
19 白羅紗紅日ノ丸形内牡丹獅子紋陣羽織 七代宗辰所用 1   江戸18世紀
20 黄羅紗日ノ丸紅波白花色糸フセ陣羽織 八代重熈所用 1   江戸18世紀
21 上白下浅黄上金五岳文字下金雲紋陣羽織 十一代治脩 1   江戸18世紀
22 紅羅紗白梅紋下唐更紗陣羽織 十四代慶寧所用 1   江戸19世紀
23 加賀藩軍装図録 2・3

 

2 牧昌左衛門 江戸/文化2年1805
24 蝶鮫文陣笠 五代綱紀所用 2   江戸17世紀

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