今回の最大の見所は、加賀蒔絵を代表する名工五十嵐道甫と清水九兵衛の競演です。特に五十嵐道甫の作品では、県文「蒔絵螺鈿秋月野景図硯箱」と「籬に秋草図」(重文『古今集 清輔本』箱)など、道甫の代表的モチーフである秋草の洗練された表現を、そして清水九兵衛では重文「蒔絵和歌の浦図見台」と「蒔絵淀槌車図硯箱」での絶妙な水波の表現をご堪能いただきたいと思います。そして、これら代表作の比較対照をとおして、両大家の表現様式にゆるやかな共通点があることにお気づきいただけることと思います。その共通点こそが、加賀蒔絵の神髄ではないでしょうか。