書跡と文房具
前田育徳会尊經閣文庫分館
  平成23年 7月16日(土)〜9月6日(火) 会期中無休

 書に欠かせない硯、筆、紙、墨は中国の宋時代以降「文房四宝」と呼ばれ、文人の間で最も重要な道具として珍重されてきました。筆、紙、墨は消耗品でもありますが、硯は半永久的に所蔵が可能なところから、中国では殊に硯に対する思い入れが生まれました。
 そのため「硯に魂が宿る」と捉えていました。それゆえ文房具は単に書写の道具というよりも、伝統ある文人思想を背景として発展した工芸品と言えます。 墨はその一部を22年ぶりに展示しますが、乾・坤の二箱に各五段重ねとなり、墨の形に応じて刳形を設け、合計55挺が収納されています。
 今回は第二重と第五重の9挺の墨と付属する墨譜と呼ばれる調書と拓本の二冊を展示します。その中には、割れや欠けのあるもの、使用跡のある墨も含まれていますが、その愛用品としての魅力が伝わってきます。その他に中国の文房具として、文鎮・筆架・水滴・水入・墨床などに、日本の文台・硯箱を合わせて展示し、一部に室礼展示を工夫してみました。
 こうした文人思想に基づく文房具のコレクションは、小堀遠州や三代藩主前田利常の収集品が含まれており、茶道具や名物裂の収集と同様に、両者の精神世界ともいえる美意識を感じていただくとともに、寛永文化の中心人物である後水尾天皇をはじめとした文化人たちの手跡の美と、そこに記された心情に触れるひと時をお過ごしください。

     
No 作品名 員数
1 墨 10重のうち第2重・第5重  付墨譜 2重と2冊
2 後陽成天皇 物語文切「六条わたりに・・・」 1紙
3 後陽成天皇 懐紙 冬歌及恋歌 1幅
4後水尾天皇 懐紙 詠鹿驚夢 1幅
5

後水尾天皇 消息

1紙
6 後水尾天皇 富士図  賛 後西天皇 1幅
7 後西天皇 懐紙 秋風に 1幅
8 後西天皇 懐紙 詠冬地儀 1幅
9 細川藤孝 和歌短冊 風吹ば 1紙
10 細川藤孝 和歌短冊 うつり行 1紙
11 小堀宗甫(遠州) 和歌短冊 初冬懐舊 1紙
12 松花堂昭乗 消息 5通継立 1巻
13 近衛信尹 詩色紙 與君後會 1紙
14 近衛信尹 消息 袖にあらしを 1紙
15 瑪瑙石硯 1点
16 破月起雲硯 1点
17 蕉白硯 1点
18 ●露硯 ( ●は、手へんに邑) 1点
19 重玄硯 1点
20 七宝硯屏1点
21 青貝五角軸筆1本
22 象牙朱塗軸筆 1本
23 和蘭陀筆軸(高麗塗軸筆) 1本
24 銅シレズ成筆架 1点
25 瑪瑙石獅子文鎮 1点
26 銅寝獅子筆架 1点
27 銅獅子筆架 1点
28 白玉雲龍彫紫檀座墨床 1点
29 白玉雲龍彫墨床 1点
30 檀座白玉蓮等彫墨床 1点
31 象牙獅子文鎮 1点
32 銅玉取獅子文鎮 1点
33 象牙車輪文鎮 1点
34 銅獅子文鎮 1点
35 紅玉鈎筆架 1点
36 銅福禄寿文鎮 1点
37 白玉馬猿文鎮 1点
38 白玉●龍鈎文鎮 (●は虫へんに璃のつくり) 1点
39 銅蟹文鎮

3点1組

40 真鍮大卦算 2本
41 銅鍍金翡翠形水滴 1点
42 白高麗上手水入 1点
43 銅兎水入 1点
44 角類梅花彫水洗 1点
45 白磁秋海棠式筆点 1点
46 白玉水盂 1点
47 古銅水注 1点
48 蓮葉式白玉筆点 1点
49 紅水晶水盂 1点
50 秋野歌書蒔絵小硯箱 1合
51 唐物筆箱 1点
52 黒塗薄蒔絵文台・硯箱 1組
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