今回の展示で再認識していただきたいのは、古九谷という概念の広さです。そこで特に古九谷の小品について、近年展示されなかった館蔵品を今回選定しています。
　古九谷といえば豪放華麗な平鉢類を思い起こすかたが多いと想いますが、小皿類や徳利にこそ味わいがあるとしてコレクションされているかたもいます。平鉢と小皿は同一意匠のものもあれば、全く別の印象を与えるものもあります。そしてこの両者を眺めていると、九州の色絵から古九谷、そして再興九谷から現代の九谷焼までを包含するような美意識を感じることができます。それは、自然や文化を含む広い意味での加賀の風土が九州から選び、独自に洗練させていった色絵の美意識ということができるでしょう。
　やきものを展示する際に頭を悩ませるのが、裏面や見込を見たいとのご要望にどのように対応するかです。その一方で、強い地震も想定して展示を行わなければなりません。
　そこで今般『九谷名品図録』の増補版刊行にあたり、小品を除く古九谷全作品と、主要な再興九谷の裏面と銘の図版も掲載することで、この問題の改善を図りました。同図録では古九谷平鉢類の解説を全面的に書き改めたほか、近年の発掘成果なども概説に織り込んであります。この機会に是非ご覧ください。