「彫刻」と聞いて、偉人や著名人の「胸像」や、人の顔・頭部を指す「首」をイメージした方も多く居られるものと思われます。人の顔をモチーフとして作られる立体作品は、彫刻・工芸を含め、洋の東西を問わずたいへん古くからみえるものとなっています。
彫刻を習い始めるに当たり先ずはじめに作るのがこの「首」であるように、人体彫刻における最も基本的な単位であると同時に、生涯「首」制作一筋に打ち込む作家が居るように、たいへん奥深く魅力に溢れるテーマ・モチーフでもあり、彫刻において一つのジャンルを形成しています。このように人の顔を中心に、頭部〜頸部にかけての「首」は、人体の中で最もまとまった彫刻的な量塊の美を示している部位であり、また同時に像主その人を代表しているのみならず、その人物の性格や心情、さらには人生をも代弁する「顔」を含むもので、人間表現の対象としても最も端的で魅力溢れる対象としてあるものです。
本展は、館蔵の吉田三郎作品などを中心として、顔を中心とする多彩な表情を持つ首作品の諸相を眺め、像主の個性溢れる人物の表現や、モデルの人となりや人間性と、素材との融合により醸成される首作品独自の存在感をお楽しみいただくと共に、彫刻家の深い人間観察や人物表現の眼差しをも辿るものです。 |