石川県の工芸

 
第5展示室
  平成22年3月10日(水)〜3月27日(土) 会期中無休     
  石川県は、美術工芸活動の盛んな地域として知られていますが、とりわけ藩政時代より培われてきた工芸技術は、高い水準を保持し今日まで受け継がれているということができます。確かに一時期、明治維新における幕藩体制の崩壊によって、強力な庇護者であった前田家を中心とする武家社会が消滅し、伝統の技の存続が危機に瀕することはありました。しかし、当時、国策としてうたわれた殖産興業政策にのっとり、たとえば明治5年、金沢に開拓所が設置され維新で失業した細工所の職人を救済する措置が施されたことに象徴されるように、その水脈は多くの志ある人々によって保たれていきました。
  明治期以降、今日に至るまでの石川県の工芸作品を見ていくと、その作風にそれぞれの時代が反映されているようです。大ざっぱに見ていけば、明治期に特徴的な超絶技巧による過剰ともいえる装飾表現は、輸出用の東洋趣味が顕著に示されているといえます。また、大正から昭和戦前期にかけては、工芸職人の間から作家的意識を持つ人々が現れ、鑑賞を目的とした工芸作品が生み出されていく時期でした。そして戦後は、伝統技術を受け継ぎ活かしながら、新しい意匠表現に取り組む作家や、従来の用途に限定されない、より造形的、革新的な表現を追求する作家など、多様な創作活動が行われ、今日に至っています。
 当館では、昭和60年に「特別陳列 明治の工芸」を開催して以来、それまでまだ全国的に注目されることのなかった明治期の工芸にスポットを当てるとともに、当県の代表的な工芸作家の作品を積極的に収集・展示してきました。 本展では、そうして収集したコレクション及びご寄託いただいている作品の中から、近現代の当県ゆかりの優れた工芸作品を一堂に展示いたします。
分野 作家名 作品名 制作年 展覧会 数量
陶磁 浅井一毫 赤絵金彩貝文花瓶 明治     1個
陶磁 十代 大樋長左衛門 輪花「花器」 昭和62年 第19回改組日展    1口
陶磁 北出不二雄 青釉刻線鷺文壺「独り」 平成2年 第13回伝統九谷焼工芸展    1口
陶磁 九谷庄三 色絵金彩花鳥文大香炉 明治11年     1基
陶磁 清水美山 色絵金彩花詰蓋物 明治     1客
陶磁 二代 酢屋九平 金襴手雲龍図鉢 明治31年頃     1口
陶磁 初代 諏訪蘇山 梅透彫花瓶 明治     1個
陶磁 三代徳田八十吉 深厚釉組皿 昭和58年 第6回伝統九谷焼工芸展九谷連合会理事長賞 5枚
陶磁 初代 中村秋塘 色絵青海波貝文花瓶 大正4年     1個
陶磁 春名繁春 色絵金彩海龍図遊環花瓶 明治12年頃     1個
陶磁 松本佐平 金襴手官女奏楽図双耳花瓶 明治11年     1個
陶磁 吉田美統 釉裏金彩更紗文壺 平成18年     1口
漆工 大垣昌訓 蒔絵草花図絵替り椀 大正     6客
漆工 大下雪香 漆絵四季草花図絵替膳 昭和7,8年     20客
漆工 大場松魚 平文輪彩箱 昭和59年 第31回日本伝統工芸展 1合
漆工 小松芳光 ひさご漆飾筥 昭和56年 第13回改組日展 1合
漆工 沢田宗沢 蒔絵牛に童子図丸額 明治     1面
漆工 沢田宗沢 蒔絵巻絹図額 明治11年頃     1面
漆工 沢田宗沢 蒔絵芦雁図額 明治21年頃     1面
漆工 寺井直次 蒔絵箱「鶴聲残夢」 昭和60年 第32回日本伝統工芸展 1合
漆工 藤井観文 片切沈金彫春秋花文飾筥 昭和36年 第8回日本伝統工芸展 1合
漆工 前 大峰 沈金花壇文飾筥 昭和44年 第16回日本伝統工芸展 1合
漆工 松岡吉平 蒔絵落雁図丸額 明治     1面
漆工 松田権六 迦陵頻伽宝相華文蒔絵箱 昭和40年     1合
染織 水野博 友禅訪問着「春」 昭和46年 第18回日本伝統工芸展 1枚
染織 水野博 友禅訪問着「寂」 昭和47年 第19回日本伝統工芸展 1枚
染織 水野博 友禅訪問着「創生」 昭和48年 第20回日本伝統工芸展 1枚
染織 水野博 友禅訪問着「群」 昭和49年 第21回日本伝統工芸展 1枚
染織 水野博 昭和51年 第1回石川県工芸作家選抜美術展 2曲1隻
染織 水野博 友禅訪問着「芽」 昭和52年 第2回石川県工芸作家選抜美術展 1枚
金工 初代 魚住為楽 砂張三象花入 昭和23年     1口
金工 三代 魚住為楽 砂張稜線磨地水指 昭和60年 第32回日本伝統工芸展 1口
金工 金岡宗幸 鋳造砂張糸巻水指 昭和44年 第16回日本伝統工芸展 1口
金工 高橋介州 加賀象嵌鴛鴦香炉・香合 昭和15年 第 回日本現代工芸美術展商工大臣賞 1対
金工 銅器会社 金銀象嵌牡丹唐草文蝋燭台 明治     1対
金工 八代 水野源六 金銀象嵌雪に鷹図香炉 明治     1基
金工 十一代 宮崎寒雉 金銀象嵌猩々薄端 明治15年     1口
金工 初代 山川孝次 金銀象嵌草花文鳥籠置物 明治     1個
金工 山田宗美 鉄打出狛犬大置物 明治42年     1対
金工 米沢弘正 金象嵌桐図花瓶 明治42年頃     1対
金工 米沢弘安 金銀象嵌鴛鴦香炉 昭和45年     1対
木竹 氷見晃堂 桑・黒柿造片身替色紙箱 昭和46年頃     1合
木竹 川北良造 欅造食籠 平成4年     1合
木竹 橋本仙雪 竹組長角盆 昭和54年 第4回工芸作家選抜美術展 1枚
人形 井口十糸 木心桐塑人形「野の精」 昭和57年 第29回日本伝統工芸展 1躯
截金 西出大三 木彫截金彩色香盒「匂鳥」 昭和47年   1合
截金 西出大三 木彫桐箱香の匣「みくまの」 昭和42年 第14回日本伝統工芸展 1合

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