「晴れ舞台」、「晴れの門出」など今日普通に使われているハレという言葉。ハレとケは、柳田国男がその概念を見いだしてから今日まで、民俗学では重要な主題の一つとなっています。これまでも種々の論議を呼んでいますが、正月や祭りなどの儀礼は「ハレ(晴)」であり、その他の日常を「ケ(褻)」と区別することは論を待たないところでしょう。また漁村、武家、さらには宮廷においてもそれぞれのハレやケはありますが、主に農耕社会の年中行事が、ハレ・ケ・ケガレという循環型の時間概念を生んだとする説は有力です。
ハレの日を設け、ケの日との違いを際立たせてきた、折り目ある生活や時間の流れに、美術はどう関係してきたのでしょうか。日本建築において「ハレの空間」ともいえる客間。中でも床の間に美術品を飾る事が定着したのは書院造りが広まった室町時代です。しかし江戸時代までは、そのような贅沢を一般庶民に禁じており、一般的にハレの日に床の間に掛け軸を飾るようになったのは明治以降といえるでしょう。
今回の展示ではハレの日を飾った日本画。ハレの日を描いた日本画。そしてハレ以外の時間帯を描いた日本画も比較展示する小特集です。現代における生活スタイルの変遷は、ハレとケを混沌とさせていますが、お正月のひととき日本人が愛でた「ハレの美」をお楽しみ下さい。