アメリカで活躍した日本人画家  東典男の世界 −宙に棲む淑女たち  
第4展示室
  平成22年9月11日(土)〜10月24日(日) 会期中無休     
バラライカを持つ裸婦
バラライカを持つ裸婦
 

灰色の中の形象 1964年
IMAGE IN THE GRAY 


 東典男氏は、金沢美術工芸短期大学油絵科(現金沢美術工芸大学)卒で、1955年に渡米し、以来2004年に亡くなるまで、ニューヨークを拠点に旺盛な創作活動を展開した画家です。
  1928年に三重県紀北町に生まれ、名古屋陸軍幼年学校に進みますが、在学中に終戦となり、48年に金沢美術工芸専門学校に入学しました。美大の3期生で、高光一也(金沢美大名誉教授・芸術院会員・文化功労者)に師事し、写実的な人物画や裸婦を描いて、光風会、日展に出品しています。
  渡米後はロサンゼルスのシュナード美術学校、次いでニューヨークのアート・スチューデント・リーグに学んでいます。金沢時代、師・高光一也を彷彿とさせる裸婦を描いた東氏の画技は、シュナードの教授をして、「彼の裸婦には教えることは何もない」と言わしめるものでしたが、抽象理論を学び、シルクスクリーンを用いた油彩の抽象画を創出して一世を風靡することとなります。
   
  1960年代半ばからの10年間で7000点以上の作品を制作し、15の画廊と契約して完売するという寵児ぶりを見せています。
  版画技法の転用がこうした大量生産を可能にし、その作品は『アズマ・プリント』と時に呼ばれ、周囲の芸術家に大きな影響を与えました。しかし、大病し、もう一度自分にとって絵とは何かと考えたとき、裸婦に生命の象徴を見いだしたのでした。
  70年代半ば以降、再度裸婦をテーマとし、マチスの切り絵にも通ずる、鮮やかな単色の色面に無影の裸婦が浮かぶ巨大な作品を次々に制作し続けました。
  本展では半世紀に及ぶ東氏の創作の歩みを、金沢時代の初期作品から晩年・2002年の裸婦作品まで、油彩・素描など40点余の代表作によりご覧いただきます。
  象徴性に富んだ東氏独自の絵画世界をご堪能ください。 
 

静子の像
静子の像

YUのポーズ、黄色の中で

 


東 典男 略歴

1928年 三重県紀北町(旧紀伊長島町)に生まれる。
1943年 名古屋陸軍幼年学校に入学。
1948年 金沢美術工芸専門学校油絵科入学。
      高光一也に師事する。
1952年 金沢美術工芸短期大学卒業。上京。
1955年 渡米。シュナード美術学校に学ぶ。
1957年 ニューヨーク・アート・ステューデント・ リーグに学ぶ。
1960年 シアトル美術館・国際版画ビエンナーレ展で 「ウィンターNo.5」が           受賞・美術館買上。
1962年 マジソン画廊(NY)で個展。
1963年 アメリカ色彩版画展出品、第1席。
      シルクスクリーンを用いた油彩作品で一世風靡。
1965年 東京国立近代美術館「在外日本作家展 ヨーロッパとアメリカ」に      「灰色の中の形象」出品。
      この頃IBMの依頼で、1500点の作品を制作する。
1970年 Who's Who IN AMERICAN ARTに記名。
1971年 アメリカ版画協会理事に就く
1974年 複数制作をやめ、裸婦を描き始める。
1995年 東京セントラル美術館で「東典男展」開催。
2004年  アメリカにて死去。

YUのポーズ、黄色の中で
   
東典男の世界 展示リスト
作品名 制作年 技法材質 所蔵
1 自画像 c.1950 油彩・キャンバス  
2 静物 1950 油彩・キャンバス  
3 白い服と黒いスカートの女 (坐像) 1951 油彩・キャンバス  
4 静子の像 1952 油彩・キャンバス  
5 裸婦 1952 油彩・キャンバス  
6 裸婦 c.1954 油彩・キャンバス  
7 裸婦 1954 油彩・キャンバス  
8 静かなる静物 1957 油彩・キャンバス  
9 IMAGE IN THE GRAY 1964 シルクスクリーン・油彩・キャンバス  
10 HAMLET 1966 シルクスクリーン・油彩・紙  
11 INTERIOR 1969 シルクスクリーン・油彩・キャンバス  
12 IMAGE-G 1969 シルクスクリーン・油彩・紙  
13 IMAGE No9 1970 シルクスクリーン・油彩・紙  
14 RED ROOM 1970 シルクスクリーン・油彩・紙  
15 IMPRESSION-RED 1970 シルクスクリーン・油彩・キャンバス  
16 SEA COAST 1973 シルクスクリーン・油彩・キャンバス  
17 COMPOSITION 1973 シルクスクリーン・油彩・キャンバス  
18 ウインターニューヨ−ク 1974 油彩・キャンバス  
19 月と裸婦 1974 油彩・キャンバス  
20 バラライカを持つ裸婦 1984 油彩・キャンバス  
21 バラライカを持つ裸婦 1984 油彩・キャンバス  
22 ブルーの中の裸婦 エレーン 1995 油彩・キャンバス  
23 椅子のイレーヌ (習作B) 1992 油彩・キャンバス  
24 ヒ・ユーシャの女 1992 油彩・キャンバス  
25 紫色のタイツ 1993 油彩・キャンバス  
26 青の中の裸婦−4 1993 油彩・キャンバス  
27 淡いブルーグレーの中に 1994 油彩・キャンバス  
28 赤の中の裸婦−11 1994 油彩・キャンバス  
29 クリムソン色の上に 1994 油彩・キャンバス 当館蔵
30 裸婦二人のコンポジション 1994 油彩・キャンバス  
31 グレイの中の裸婦立像-1 1996 油彩・キャンバス  
32 グレイの中の裸婦立像-2 1996 油彩・キャンバス  
33 セルリアンブルーに立つ裸婦 1996 油彩・キャンバス  
34 花模様の上の裸婦 1996 油彩・キャンバス 当館蔵
35 バラライカを持つ裸婦 1996 油彩・キャンバス 当館蔵
36 YUのポーズ、黄色の中で 1997 油彩・キャンバス  
37 グレーの中の YU 1997 油彩・キャンバス  
38 プルシャンブルーの赤い花 1997 油彩・キャンバス 当館蔵
39 花艶三形 1997 油彩・キャンバス  
40 構成の裸婦群像 1998 油彩・キャンバス  
41 裸婦習作 2002 油彩・キャンバス  
42 素描 女性像 1954 インク・紙