前田氏は昭和28年滋賀県生まれ、51年に金沢美術工芸大学油画科を卒業して東京芸術大学大学院に進み、54年からは仏政府給費留学生として２年間パリ国立高等美術学校に在籍、57年に帰国し母校金沢美大油画科講師となり、現在に至っています。
本展は、前田氏がパリ留学中に描いた作品から、最近作まで、30年間の創作の歩みを18点の作品に凝縮してご覧いただくものです。
前田氏は、抑制の利いた色彩と人体を主にした具象の構成によって、時代を捉えた作品を発表してきました。「静物」,「家族の肖像」,「拒絶する男」,「兵士」,「トルソ」,「銃口」,「戦闘機」、様々なモティーフがキャンバスに併置され、テーマは静から動へと展開していきます。一見平面的と思える画面は、大小の相似形や適切なヴァルールを持った色面により、空間を構成するのです。また画面には異なる時系列の像が描かれますが、こうした異時同図の構図は西洋の古典にも日本の絵巻にもうかがえるもので、前田氏が作品にストーリーを求めると共に、両洋の古典に連ならんとする意志を強く感じさせるものでもあります。
造形の追求と物語性、二律背反とみなされるこの二つの要素を、前田氏が今後どのように結びつけ展開してゆくのか、本展が画家にとって新たな出発点となり、より多くの方々に前田氏の絵画世界をご堪能いただく契機となれば幸いです。
画室 I 1984 第58回国展 いざない'07(II) 2007 第81回国展
講 演 会
別館での展示
