「新春を寿ぐ」とのタイトルを冠した今回の特集では、新しい年が佳き年でありますようにとの願いを込めて、新年の干支である兎をモティーフとした作品から、実際の用途の他に「お目出度い」シーンを演出するのに用いられる能面・能装束や梅、松、鶴、春秋など様々な吉祥図による絵画、調度を展示します。
兎は中国においては、満ち欠けを繰り返す月に住み、不老長寿の仙薬をついていると考えられていました。そこで、不老不死や復活、再生などのお目出度い意匠として様々な場面に用いられてきました。日本では仙薬が餅に変わりましたが、文化的な意味は継承されています。そこには兎の強い繁殖力や、俊敏さに対する評価も加味されていたことでしょう。
今回兎の名作として、先の「久隅守景展」で館内外の表示に大活躍した「笹に兎図」に改めて注目したいと思います。学問を奨励した加賀藩の文化風土の中で画業を開花させた守景は、道教、儒教、仏教に関する鋭い洞察を、実にわかりやすく表現しています。今回は、この作品にこめられた深意と、上部を大きく開けた構図の謎解きとして、仏画の脇絵として展示します。中絵には、牧谿の筆と伝えられる「観音図」を用います。新しい年を祝うのにふさわしい一点となるのではないでしょうか。