狩野派の誕生—久隅守景の背景— 

 
第2展示室
  9月26日(土)〜10月25日(日) 会期中無休     


 室町時代にはいり公武の殿邸や寺院が新たに多数造営されるのにともない、障屏画の需要も急速に高まり、注文を迅速・確実にこなす高い技量を保持した作家集団が注目されるようになりました。狩野派はその典型であり、対応する画題は中世以来の山水、花鳥、人物に加えて走獣、当世風俗など多岐にわたり、描法も真体、行体、草体や漢画調、やまと絵調を自在にこなし、大画面のみならず、掛幅や絵巻、扇面、絵馬などあらゆる需要に応じました。
 今回の特別陳列は、館蔵品、寄託品により狩野派の誕生と江戸時代初期の展開を概観します。狩野派は、広範囲の注文に的確に応えるために室町時代に高い評価を得ていた作品の画様や画体に習熟してゆきます。後年、そのような制作方法が粉本主義との批判を受けますが、それぞれの画家も創意工夫につとめています。今回の展示作品では秋月等観の《西湖図》(重文)が、狩野派内においてどのように継承され、変容していったかを元信、探幽の作品との比較によって確認することができます。その他花鳥や人物など、基本的な画題の取り扱いも、やはり狩野派ならではの表現が認められます。
  「久隅守景の背景」の副題から、今回は二つの《四季耕作図》も展示されます。このうち大乗寺の所蔵品は、守景とは逆に、やまと絵の伝統を漢画的な表現に翻案している点が注目されます。また狩野即誉の作品は、守景の様式を意識しつつも、狩野派の伝統的な表現を基調としています。「久隅守景展」とあわせてご鑑賞いただくことにより、狩野派の流れの中で、守景がどのように独自性を打ち出していったかを、さらに深くご理解いただけることと思います。

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番号 指定 作品名 作者名  年代
1 重文 西湖図 秋月等観 弘治9(明応5) 1496
2   西湖図 狩野元信 室町16世紀
3   山水図 伝狩野元信 室町16世紀
4   琴棋書画図   桃山〜江戸17世紀
5   布袋図 伝狩野元信 室町16世紀
6 県文 松樹禽鳥図 狩野永徳 桃山16世紀
7 県文 四季耕作図 伝狩野光信 江戸17世紀
8   西湖図 狩野探幽 江戸17世紀
9   楠公未来記拝観図 狩野探幽 江戸17世紀
10   唐獅子図 狩野伯圓 江戸17〜18世紀
11   四季耕作図 狩野即誉 江戸18世紀