特集展示 九谷の色


 
第5展示室

  9月26日(土)〜10月25日(日) 会期中無休     

 全国にその名を知られる九谷焼は、江戸時代前期に制作された、いわゆる古九谷がその源流であるということができます。加賀江沼の九谷の地で最初につくられたことから、以来、今日まで続く石川県南部のやきものを総称して九谷焼と呼んでいます。古九谷廃窯のあとは、金沢・能美・小松・加賀などさまざまな窯で焼かれ、表現も多様化していくのですが、黄・青・緑・赤・紫のいわゆる五彩を中心とする釉薬を駆使した色絵磁器としての特徴は、現代も受け継がれています。
 明治以降、九谷の特徴を活かしながら多くの陶工が活躍していきます。たとえば、明治期の名工といえる松本佐平や初代須田菁華は、古九谷を写しその技術を学んで自己の作風の創造に反映させました。初代徳田八十吉は、とくに古九谷の重厚な釉薬の調合技法について研究し、独自の「深厚釉」を開発しました。その後三代徳田八十吉は、「彩釉」という色釉の濃淡で表現する作風を生み出して、斬新な感性を示しています。また、初代八十吉に学んだ二代浅蔵五十吉は、線彫りや陶彫りを行って彩色した「刻彩」に加え、従来からの色釉に一層の工夫を重ね、「浅蔵カラー」と呼ばれる独特の深くて渋い色絵の世界を築きあげました。
  一方、昭和初期に色絵磁器の研究のため北出塔次郎の窯で作陶を行った近代陶芸の巨匠・富本憲吉は、当時の九谷陶芸界に大きな刺激を与え、塔次郎も多大な薫陶を受けて、新しい九谷の色絵世界を確立しました。そして塔次郎に学んだ北出不二雄は、九谷の伝統に学んだ深い色調のものから、現代風な明るい色釉に展開させたものまで幅広い作風を見せていくことになります。
 本展では、明治から現代に至る九谷焼を代表する作家の作品20点を展示し、あらためて九谷の持ち味である「色」に注目していただきたいと思います。 なお、同展示室において、古九谷の名品14点を合わせて展示しますので、近現代の九谷と見くらべてその伝統と創造をご覧いただければ幸いです。

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九谷の色
分野 指定 作品名 作家名 制作年 展覧会
陶磁   青手松竹梅文平鉢 (古九谷)    
陶磁   青手松鳥図平鉢 (古九谷)    
陶磁   青手老松図平鉢 (古九谷)    
陶磁   色絵松樹図平鉢 (古九谷)    
陶磁   □色絵鶴かるた文平鉢 (古九谷)    
陶磁   色絵牡丹文平鉢 (古九谷)    
陶磁   色絵唐子山水図平鉢 (古九谷)    
陶磁   色絵竹虎図平鉢 (古九谷)    
陶磁   色絵海老藻文平鉢 (古九谷)    
陶磁 ○□ 色絵布袋図平鉢 (古九谷)    
陶磁 色絵鶉草花図平鉢 (古九谷)    
陶磁   色絵石畳双鳳文平鉢 (古九谷)    
陶磁 青手桜花散文平鉢 (古九谷)    
陶磁   色絵軍扇散花鳥人物図平鉢 (古九谷)    
陶磁   色絵鶴かるた文古九谷写平鉢 松本佐平 明治28年頃  
陶磁   色絵人物図古九谷写平鉢 初代 須田菁華 明治42年頃  
陶磁   色絵泊舟図古九谷写平鉢 初代 須田菁華 明治  
陶磁   色絵鳳凰図花瓶 竹内吟秋 明治42年  
陶磁   彩果文花瓶 初代 松本佐吉 昭和12年  
陶磁   色絵山水図大鉢 初代 徳田八十吉 昭和28年頃  
陶磁   色絵王魚図飾皿 北出塔次郎 昭和35年頃  
陶磁   色絵朝顔大皿 森 一正 昭和37年  
陶磁   芦雁大皿 二代 松本佐吉 昭和51年  
陶磁   樹間に遊ぶ 色絵飾皿 二代 浅蔵五十吉 昭和53年  
陶磁   双魚文壺 中村翠恒 昭和53年  
陶磁   長寿餝皿 二代 徳田八十吉 昭和56年  
陶磁   赤絵初夏壺 北出不二雄 昭和56年  
陶磁   青手鳥文台鉢 北出不二雄 昭和58年  
陶磁   彩釉鉢 三代 徳田八十吉 昭和58年  
陶磁   燿彩鉢「極光」 三代 徳田八十吉 平成4年  
陶磁   色絵山草文壺 宮川哲爾 昭和58年  
陶磁   色絵星晨春秋方器 吉田荘八 昭和63年  
陶磁   色絵開花来鳥図壺 北出星光 平成元年  
陶磁   雲中麒麟図扁壺 武腰 潤 平成3年  
その他の展示
漆工   平文光輪棚 大場松魚 平成2年 大場松魚回顧展
漆工   山法師蒔絵金胎盤 寺井直次 平成元年  
金工   砂張水指 三代 魚住為楽 昭和 57年 第7回石川県工芸作家選抜美術展
金工   象嵌朧銀花器「岑寂樹林」 中川  衛 平成 13年 第48回日本伝統工芸展日本工芸会保持者賞
染織   友禅訪問着「創生」 毎田仁郎 昭和54年 第26回日本伝統工芸展
染織   友禅訪問着「からまつ」 毎田仁郎 平成4年 第39回日本伝統工芸展
染織   友禅訪問着「ねじ花」 毎田健治 昭和60年 第32回日本伝統工芸展
染織   友禅訪問着「唐楓」 毎田健治 昭和63年 第35回日本伝統工芸展