国宝 土佐日記の世界 前田育徳会尊經閣文庫 |
平成20年9月20日(土)〜10月24日(金) 会期中無休 ※国宝土佐日記は10月5日まで展示 |
財団法人前田育徳会と石川県との文化財の展示に関する新たな契約に伴い、展示室の名称が変更となりました。幅広い内容を持つ同会の文化財を、これまで以上にご理解いただける展示を心がけたいと思っています。その最初の展覧会として同会の所蔵品のなかでも最も展示公開の問い合わせが多い国宝『土佐日記』を公開します。 『土佐日記』は、紀貫之(?九四六)が土佐守の任を終えて京の自邸へ帰る承平四年(九三四)十二月二十一日から翌年二月十六日までの五十五日間にわたる船旅を、女性の筆に仮託して書かれたわが国最初の仮名日記です。そ れまでの日記は男性が公的行事等を漢文で書いた公文書的なものでしたが、『土佐日記』は、愛児の死という深い悲しみが全編を通したテーマであり、このような私的な感情や出来事を素直に表現するために、女性が用いる仮名で日記を記す事にしたものと思われます。貫之は『古今和歌集』の撰者の一人であり、その序文にはすでに仮名で、和歌(やまと歌)が日本人の心情を表現し伝える重要なものだと述べていますが、『土佐日記』の誕生は後の女流文学の登場をうながせた源といえましょう。本書は、貫之の自筆原本を、文暦二年(一二三五)に歌人であり歌学者の藤原定家が書写したことが奥書によって明らかです 書写は定家自筆の独特の書風ですが、末尾に貫之の筆跡が臨模されており、今は失われた自筆本の内容を伝える現存最古の写本としてとても貴重です。 その他、紀貫之や藤原俊成、藤原定家に焦点をあてて尊經閣文庫を紹介いたします。 ■学芸員の眼■ 公開を待ち望んでいらっしゃる方が多い国宝『土佐日記』を展示しますが、この作品は冊子本なので実際に展示する場合は、見開き二ページをご覧いただくことになります。こうした場合は文字解説や写真パネルを駆使して、より多くの情報を発信するように工夫を凝らしていますが、それはあくまでも付属的な紹介であり、作品本来の魅力をカバーするものにはなりません。このような書写本の魅力は、その内容は言うまでもなく、手跡やその料紙から、作者や筆者が時代を超えて鑑賞者それぞれの心にイメージされることと思われます。「手書き」が過去のものとなりつつある現代ゆえに、ことばが伝える日本の文化と対話していただきたいと思います。 |
---|
No | 作品名 | 作者名 | 員数 | 時代 | |
1 |
竹取翁物語 | 西洞院時慶筆 | 1冊 | 桃山〜江戸16〜17世紀 | |
2 |
伊勢物語 | 伝明融筆 | 1冊 | 室町16世紀 | |
3 |
伊勢物語 | 其阿筆 | 1冊 | 桃山〜江戸16〜17世紀 | |
4 |
大和物語 上 | 1冊 | 江戸17世紀 | ||
5 |
◎ | 手鑑「野辺のみどり」より寸松庵色紙他 | 伝紀貫之筆等 | 1帖 | 平安〜鎌倉9〜13世紀 |
6 |
古今和歌集 | 二条為世筆 | 1帖 | 延慶3年(1310) | |
7 |
梅鶯蒔絵箱(古今和歌集箱) | 1合 | 江戸18世紀 | ||
8 |
古今和歌集 | 伝細川藤孝筆 | 1冊 | 桃山16〜17世紀 | |
9 |
古今和歌集序 紀貫之撰 | 伝藤原清輔筆 | 1冊 | 平安12世紀 | |
10 |
土佐日記 展示期間は9/20〜10/5 | 藤原定家筆 | 1帖 | 文暦2年(1235) | |
11 |
屏風蒔絵箱(国宝土佐日記箱) | 伝清水九兵衛作 | 1合 | 江戸17世紀 | |
12 |
雲繋ぎ宝尽し文様金襴(富田金襴) | 1枚 | 宋 10〜13世紀 | ||
13 |
前田利常画像 | 篠原探谷模写 | 1幅 | 明治24年(1891) | |
14 |
将軍様相国様御成之次第 | 板津作左衛門写 | 1冊 | 江戸17〜18世紀 | |
15 |
◎ | 花月百首撰歌稿 | 藤原俊成筆 | 1巻 | 建久元年(1 190) |
16 |
水無瀬恋十五首和歌 藤原俊成判 | 伝後奈良天皇筆 | 1冊 | 室町16世紀 | |
17 |
俊成卿九十賀和歌 | 1冊 | 江戸17〜18世紀 | ||
18 |
◎ | 十五首和歌 | 藤原定家筆 | 1幅 | 安貞元年(1227) |
19 |
新古今和歌集 | 伝二条為親筆 | 1帖 | 鎌倉〜南北朝14世紀 | |
20 |
小倉百人一首 | 伝後小松天皇筆 | 1冊 | 室町14〜15世紀 | |
21 |
詠歌大概 | 三條西公条講 | 1冊 | 永禄9年(1566) | |
22 |
古今秘注(顕註蜜勘巻上定家撰) | 寂蓮筆 | 1冊 | 平安〜鎌倉12〜13世紀 | |
23 |
明月記 | 三条西公条筆 | 4巻の内1巻 | 室町16世紀 | |
24 |
女三十六歌仙色紙雉図屏風 | 6曲1双 | 江戸17世紀 | ||
25 |
古今和歌集(伝藤原清輔筆) | 尊經閣叢刊 | 2冊 | 昭和3年(1928) | |
26 |
土佐日記(藤原定家筆) | 尊經閣叢刊 | 1冊 | 昭和3年(1928) | |
27 |
惠慶集(藤原定家等筆) | 尊經閣叢刊 | 2冊 | 昭和10年(1935) | |
28 |
広田社二十九番歌合 | (藤原俊成筆)尊經閣叢刊 | 3巻の内1巻 | 昭和8年(1933) | |