特別陳列 石川県洋画の歩み 第4展示室 |
平成20年9月20日(土)〜11月10日(月) 会期中無休 |
石川の明治以降近年までの洋画の動向を38名49点の作家・作品によりご覧いただきます。
その流れを述べますと、まず、明治期、西洋化の潮流のもとに活動した得田耕や佐々木三六ら図画教師達によって洋画は本県に普及し、その後は得田に学び欧米に留学した早田三四郎(楽斎)の活躍が注目されます。 大正期には東京美術学校西洋画科に学んだ伊東哲、遠田運雄、飯森定省達が帝展や新文展で活躍を見せ、東京美術学校在校生と卒業生達による「東京美術学校郷友会展」が数年ごとに金沢で開催され、評判を呼びました。また大正期には県内の画学生達にとって岸田劉生の草土社や本県ゆかりの中川一政の存在は大きく、彼らが創立した春陽会を目指す安井巳之吉など県立工業学校生徒達の活動がうかがえます。 大正末は13年の金城画壇展の誕生や14年の飛鳥哲雄による金沢洋画研究所の創設などで大きな転機を迎え、高光一也や宮本三郎、南政善など次世代を担う画家達の登場を待つこととなります。昭和戦前期はこの三人が中央で台頭する時期であり、戦後は指導者として邁進する時期です。 昭和21年に開校した金沢美術工芸大学により、洋画の裾野は拡大し、様々な傾向の画家達が活動を展開して各美術団体の支部を設立していきました。美術の概念化が進むなか、石川は工芸の盛んな地であり、手業を制作の根幹に据える画家が多く見受けられます。具体性を持った制作が現代にあってはかえって新鮮であり、若手の活躍は近年目覚ましく、今後が期待されます。 本展は上記概略にもとづき構成するものですが、展示スペースに限りがあり、ごく限られた作品の展示とならざるをえません でした。第三展示室のコレクション展示と共にご覧いただきたく思います。 虎 早田楽斎 ■学芸員の眼■ 楽斎は明治5年、金沢醒ヶ井町に旧加賀藩士の子として生まれました。父は武芸教授で早田は年少にして一刀流総目録を取っています。洋画は石川県専門学校で得田耕に学び、その後肖像画の大家として評判を呼び、33年には明治天皇の束帯肖像画を描きました。34年から大正2年までアメリカとヨーロッパに留学し、帰国後は東京で制作、猛獣画とパノラマ画の大家として名を馳せるのでした。パノラマ画とは、例えば勇壮な戦争の一場面を人形と絵によって構成するもので、この頃大流行していました。 早田は600面のパノラマ画を描いたといいます。しかし昭和20年3月の東京大空襲によって早田は心血を注いだ作品のほとんどを焼失し、失意のうちに、翌21年没するのでした。作品が残されていたならばと、心底思う作家の一人です。 |
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№ |
作 家 |
作 品 |
制作年 |
初出展・受賞 |
所 蔵 |
1 |
得田 耕 | 休 息 | 明治20年代 | 本館 | |
2 |
佐々木三六 | 教 室 | 明治10年頃 | ||
3 |
佐々木三六 | 石浦神社 | 明治31年 | ||
4 |
佐々木三六 | 鈴 見 | 明治35 〜40年 |
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5 |
矢野倫真 | 水車小屋のある風景 | 明治21年 | 富山県立近代美術館 | |
6 |
矢野倫真 | 秋日和 | 明治34年 | ||
7 |
矢野倫真 | 和傘のある庭 | 明治35年 | ||
8 |
早田楽斎 | 虎 | 明治末 〜大正初年 |
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9 |
早田楽斎 | 静物(果物) | 明治38年 | ||
10 |
伊東 哲 | 高 原 | 大正9年 | 第2回帝展 | 本館 |
11 |
遠田運雄 | 憩 う | 昭和23年頃 | 本館 | |
12 |
坂 寛二 | 土 塀 | 大正7年 | 本館 | |
13 |
飯森定省 | 水浴の後 | 大正 | 本館 | |
14 |
中川一政 | 駒ヶ岳 | 昭和63年 | 白山市立松任中川一政記念美術館 | |
15 |
飛鳥哲雄 | 手 鏡 | 大正 | 本館 | |
16 |
硲伊之助 | アルバニアの老人 | 昭和40年 | 本館 | |
17 |
藤井外喜雄 | ロシアの少女 | 大正12年 | 本館 | |
18 |
藤井外喜雄 | モンパルナスの部屋 | 大正13年 | 本館 | |
19 |
清水錬徳 | パラダイス | 昭和14年 | 第9回独立展 | 本館 |
20 |
堀 忠義 | 暮色近し | 昭和31年 | 第12回日展 | 本館 |
21 |
安井巳之吉 | 京都京極夜景の図? | 昭和2年 | ||
22 |
安井巳之吉 | 文楽座 | 昭和2年 | ||
23 |
安井巳之吉 | 文楽座大入りの絵 | 昭和2年 | ||
24 |
安井巳之吉 | 晴天午後 | 昭和19年 | ||
25 |
宮本三郎 | 裸婦像 | 昭和14年 | 本館 | |
26 |
宮本三郎 | 裸女達に捧ぐ | 昭和44年 | 第23回二紀展 | 本館 |
27 |
高光一也 | 画室にて | 昭和21年 | 第2回日展 | 本館 |
28 |
高光一也 | カサブランカ | 昭和50年 | 第7回改組日展 | 本館 |
29 |
南 政善 | アコーディオン | 昭和10 年 | 第二部会展 特選・朝日文化賞 |
本館 |
30 |
田辺栄次郎 | セーヌ川遠望 | 昭和52年 | 第23回一陽展 | 本館 |
31 |
森本仁平 | 湖畔のはす田 | 平成7年 | 特別陳列 森本仁平展 |
本館 |
32 |
山口操助 | 雲崗石窟 | 昭和54年 | 第33回二紀展 | 本館 |
33 |
滝川武雄 | 雪の犀川 | 昭和43年 | ||
34 |
竹沢 基 | ショールをまとう | 昭和53年 | 第10回改組日展 | 本館 |
35 |
奥田憲三 | 干 網 | 昭和38年 | 第6回新日展 特選 | 本館 |
36 |
藤井多鶴子 | 夜明けのライン | 昭和57年 | ||
37 |
円地信二 | アンティークの部屋 | 平成2年 | 第22回改組日展 | 本館 |
38 |
勝本冨士雄 | 静かなる野生 | 昭和30年 | 第7回読売 アンデパンダン展 |
本館 |
39 |
鴨居 玲 | 群がる | 昭和41年 | 本館 | |
40 |
吉田冨士夫 | 催眠術'80A | 昭和55年 | 第34回二紀展 文部大臣賞 |
本館 |
41 |
村田省蔵 | 麦 秋 | 昭和62年 | 本館 | |
42 |
中村秀雄 | 独りのスペース | 昭和52年 | 本館 | |
43 |
増田 孝 | チェス台と編み上げ靴の人形 | 昭和57年 | 本館 | |
44 |
沢 オイ | 世紀の風−New Wing− | 平成19年 | ||
45 |
庄田常章 | 竜のハナ唄 | 昭和60年 | 本館 | |
46 |
西田洋一郎 | 線の領域への風景 | 平成4年 | 本館 | |
47 |
田井 淳 | 虹の星 | 平成18年 | ||
48 |
三浦 泉 | 文 月 | 平成20年 | ||
49 |
開 光市 | 装 置 | 平成元年 | 本館 | |