前田育徳会展示室

特別陳列 茶道具と名物裂

9月28日(木)〜10月22日(日)


 前田家では藩祖利家以来、代々の藩主は茶の湯に深く心を寄せ、利家は利休の高弟の一人である織田有楽(うらく)に、三代利常は小堀遠州(えんしゅう)と親しく交わり、茶の伝授を受けています。
  また金森宗和(そうわ)の子七之助を前田家が召し抱えたことから、加賀は宗和流発祥の地ともいわれています。さらに千家三代宗旦(そうたん)の子であり裏千家流祖の仙叟宗室(せんそうそうしつ)は、茶堂茶具奉行として、利常や、五代綱紀に使えました。
  以来茶の湯の盛んな地域として、その伝統は今日に続いています。

 また、名物裂(ぎれ)(金襴(きんらん)・緞子(どんす)・錦・風通(ふうつう)・繻珍(しゅちん)・ビロード・印金(いんきん)・紗(しゃ)・絽(ろ)・間道(かんとう)・モール・更紗(さらさ)など)は、そのほとんどが中国の元・明・清の時代に製造されたもので、茶道の発展とともにますます珍重されるようになりました。
  前田家では茶の湯に精通していた利常が、寛永14年(1637)、当時海外貿易唯一の窓口であり、舶来品の宝庫であった長崎へ、家臣の矢野所左衛門と、京都の目利きの吉文字屋庄兵衛を遣わせて、金に糸目をつけず蒐集しました。

 このコレクションは優れていると同時に種類が多く貴重であり、名物裂の宝庫といえるものです。
  このような歴史を経て今日に伝わる名品のなかから、茶道具では、禅宗の腐敗を批判して自由な禅風に徹した一休宗純(そうじゅん)(1394〜1481)の、その人柄を反映した破格奔放な墨跡や、かつて福島正則(1561〜1624)が所持していたのでこの名があり、前田利常の時代に前田家に蔵されたと思われる大井戸としては温和な趣を持つ「井戸茶碗 銘福島」(重美・大名物)や玳皮盞天目(たいひさんてんもく) (梅花天目)など23点、名物裂では「花七宝 (はなしっぽう) 入り石畳文様緞子(遠州緞子)」「段文様間道(日野間道)」など茶道具と密接に関連する16点を展示します。

  第2展示室の「茶道美術名品展」とあわせてご鑑賞下さい。 
 主な展示作品    (○は重要美術品)

         ○大名物 井戸茶碗 銘福島
           玳皮盞天目(梅花天目)
           雲龍釜    辻与次郎作
           茶壺 銘春の日
           古瀬戸茶入 銘孫六
           双鳳丸文様金襴(二人静金襴)
           竜三爪唐草文様緞子(珠光緞子)
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第2展示室

特集 茶道美術名品展

9月28日(木)〜10月22日(日)


 本展は、館蔵品に寄託品を加え、4つの柱で構成、67点を一堂のもとに公開します。

◇室町時代を中心とした茶道具
 この時代、日明貿易で中国から唐物(からもの)が請来(しょうらい)され、それらを部屋に飾り、鑑賞する唐物数寄すきの茶が行われました。やがて書院茶の風が成立し、また茶種を味別する闘(とう)茶を催す会なども行われました。それが一休宗純(そうじゅん)に参禅した村田珠光(しゅこう)によって、草庵による侘(わ)び茶の風が形成され、新しく和物の茶陶が茶席に取り上げられるようになり、その心は武野紹(じょうおう)により深められました。元時代の古銅柑子口花入(こどうこうじぐちはないれ)など5点を展示します。

◇桃山時代を中心とした茶道具

 侘び茶は、桃山時代に千利休(せんのりきゅう)により大成され、禅林の墨跡や和物の道具が使用されました。利休の没後、その子少庵(しょうあん)へと受け継がれ、古田織部(おりべ)の登場により侘び茶の作為性が推し進められました。
 「侘びの造形」「ひょうげた美」の小テーマのもとに、伝長谷川久蔵筆の祇園会図(ぎおんえず)(重美・県文)や、千利休作の竹蒔絵浪に亀図二重切花入、真宗大谷派金沢別院蔵の織部沓(おりべくつ)茶碗銘隻履(せきり)など17点を展示します。


◇江戸時代を中心とした茶道具

 織部の没後、時代に大きな影響を与えたのが小堀遠州(えんしゅう)です。織部の新生面を継承し、中国に好みの茶陶を注文、古染付や祥瑞(しょんずい)などを使用して綺麗(きれい)さびの茶風を創造しました。また利休の孫の宗旦(そうたん)や金森宗和(そうわ)、本阿弥光悦(ほんあみこうえつ)たちの活躍も見落とせません。加えて諸藩の大名や武士、あるいは富裕な町人たちも茶の湯を愛好、今日の我が国独自の茶道となって発展しました。
 「綺麗さび」「雅の造形」「古典の再生」の小テーマにより、平安時代の源俊頼(としより)筆の古今和歌集巻十七断簡民部切(みんぶぎれ)や、伝本阿弥光悦作の赤楽茶碗銘山科などの逸品32点を展示します。

◇茶碗と香合・水指・釜

 茶碗と香合・水指・釜を13点展示します。 

 主な展示作品   (□は石川県指定文化財)
    古九谷
       □色絵鳳凰図平鉢
       □青手樹木図平鉢


    特集 茶道美術名品展
        銅獅子香炉 本多家伝来
        大通寺撫肩釜 伝西村道仁作
        黄天目 前田家伝来
        消息 二権助宛  本阿弥光悦
        交趾大牡丹香合
       
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