前田育徳会展示室

特別陳列 桑華字苑と桑華書志
6月23日(金)〜7月23日(日)


 今回は、加賀藩五代藩主前田綱紀が、座右に置いて折に触れて書き綴ったといわれる「桑華字苑」と「桑華書志」を中心にし、ほか若干の絵巻と文房具による展示で、文化大名として有名だった綱紀の側面に触れるものです。
 まずタイトルの「桑華字苑」とは主に文字や語彙について書かれた百科辞典的なもの、また「桑華書志」は書物について書きまとめられたもので、内容は題のごとくそれぞれ我が国(=桑)のみならず、中国(=華)をはじめ、他の外国までに及ぶ広範囲で種々の事柄にわたって書かれており、綱紀の旺盛な好奇心と何でも記録し検証しようとする研究熱心な姿がうかがえます。
  ご存じのように綱紀は、学を好み美術工芸を奨励するなどの文化事業に力を注ぎました。殊に自らが中心となって藩の豊かな財力をバックに行われた、文書・典籍を

中心とする図書の収集は、国学者の新井白石をして「加賀は天下の書府」という有名な言葉を残さしめるに至っています。
 今回の展示の中心でもある「桑華書志」は、前田育徳会の中核的コレクションである尊經閣文庫の図書類の来歴・由来を明らかにしてくれているほか、愛書家・蔵書家である綱紀の学識と見識の高さをうかがう資料であること、今日伝世していない図書の手掛かりをも示している、資料的価値の高い書志学ノートとなっています。展示ではこれらのほか、利常や綱紀の時代を中心に収集されたものと思われる文房具を展示し、歴代にわたって文化人として名高かった前田家の側面と、鷹狩図・流鏑馬図などの武家の絵巻をも併せ展示し、綱紀を象徴とする江戸時代中期の封建大名の姿をながめるものです。

     
 主な展示作品
         桑華字苑
         桑華書志
         流鏑馬図 住吉廣長
         騎射図
         鷹狩図絵巻〈夏の巻〉 六代梅田九栄
         重玄硯
         唐物塗箔入硯屏
         銅獅子筆架
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第2展示室

特集 古九谷・再興九谷名品展
6月23日(金)〜7月23日(日)

 江戸時代前期の古九谷から、江戸時代後期の再興九谷諸窯までを二期に分け、各期それぞれ57点を公開します。地域別に展示しますので、古九谷の次には、「江沼地区」の再興九谷の名窯として知られる吉田屋窯が登場し、以下、「金沢地区」「能美・小松地区」の柱で構成されます。
 [江沼地区]
雄勁な筆致、渋くて深く、しかも厚く彩られた豪放華麗な「古九谷」、そして古九谷の青手の上絵技法を受け継ぐ「吉田屋窯」、赤絵細描で知られる「宮本屋窯」、吉田屋窯の塗埋様式を踏襲する「松山窯」、金襴手で有名な「永楽和全」など古九谷から和全まで、江沼地区の九谷焼の流れが学習できます。
 [金沢地区]
京都から青木木米を指導に招き開窯された「春日山窯」は、木米好みの中国趣味を反映したやきものが焼かれたことで知られます。その春日山窯の廃窯を惜しんで操

業されたのが「民山窯」で、宮本屋窯に先んじて赤絵細描の仕事がされています。続いてその民山窯の陶画工であった「任田屋徳次」の秀作も登場し、幕末から明治時代の過渡期の作として注目されます。
 [能美・小松地区]
再興九谷諸窯の中では、最も息の長い窯として知られる「若杉窯」、また若杉窯や吉田屋窯それ以外の数々の窯に関係した名工「粟生屋源右衛門」、赤絵細描に諸色を加え、繊細優美な作風の「小野窯」、松山窯とともに青九谷と通称される「蓮代寺窯」、幕末から明治の初めにかけ、華麗な彩色金襴手の技法で一世を風靡し、しかも海外に数多く輸出、殖産興業にも大いに貢献した「九谷庄三」までを展示します。
 このように地域別・年代順で展示しますと、九谷焼の作風とその流れの比較、あるいは各窯の影響関係、陶工の移動などを理解することができます。

 主な展示作品
    古九谷

       色絵鳳凰図平鉢
       青手樹木図平鉢
    再興九谷
       色絵万年青図平鉢 吉田屋窯
       赤絵琴棋書画図瓢形大徳利 宮本屋窯
       色絵金彩唐子遊図鉢 永楽和全
       色絵金彩鹿図呉須赤絵写鉢 春日山窯
       色絵唐獅子牡丹図平鉢 若杉窯
 
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展覧会案内(年間スケジュールへ) [前半4月〜9月] [後半10月〜翌年3月]