前田育徳会展示室

特別陳列 花と鳥の世界
4月22日(土)〜5月21日(日)


 南北に細長い島国としての我が国は、四季折々の変化に富み、季節ごとに数多くの花が咲き、また身近な鳥や遠くから渡り鳥なども飛来します。
 春には花見として爛漫と咲く桜を愛で、その美しい花が散る様から、寂しさや無情を感じ、それを絵画化したり工芸意匠に表すなど、桜は繊細な日本人の感性を最も象徴した花の一つといえましょう。
 このような花や鳥、殊に蓮などは古くから仏教の世界に取り入れられ、仏画や経典・仏具などに表されました。また花や鳥は、万葉集や古今集・源氏物語などの和歌や物語といった文学の世界においても扱われ、そこから絵画化されたり工芸意匠としても転化しています。 花と鳥に限らず花卉(花や木)や草虫・小動物・魚藻・蔬菜などをも対象とし、またそれらを組み合わせた絵画を一般に花鳥画と呼んでいます。人物画や山水画と並び、東洋で最も重んじられた画題の一つです。
 中国では、南朝時代に既に興り、唐時代から五代の時期に専門の画家が出て鑑賞画として確立し、大きく発展しました。そして宋時代には宮廷画院による院体花鳥画が隆盛しています。
 我が国でも南北朝時代の頃から渡来した禅僧たちの影響を受け水墨花鳥画が描かれだし、室町時代には院体系の花鳥画も接収され、大和絵系や漢画系の画家たちにより制作されました。桃山時代には英雄覇者たちの好みを受けて大画面の障屏画に描かれ発達し、江戸時代にいたっては諸流派の筆による百花繚乱の呈をなすにいたりました。
 本展は、中国と我が国の絵画作品に工芸品を交え構成するものです。今回、ゆっくりとぜひ鑑賞願いたいものの一つが、伝雪舟等楊筆の「◎四季花鳥図屏風」です。生命力あふれる花鳥と自然の移ろいが見事に表されており、雪舟真筆に極めて近い秀作です。
     

 主な展示作品
         花鳥図 王若水
         雲珠繋ぎ鳥丸文様金襴(雲雀金襴)
         ◎四季花鳥図屏風 伝雪舟等楊
         女三十六歌仙色紙雉図屏風
         鳥画帖
         鷹狩図絵巻(春の巻) 六代梅田九栄
         紫檀鷹蒔絵刀掛
         繻子地金雲からす模様摺箔
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第2展示室

特集 花と鳥の世界
4月22日(土)〜5月21日(日)


 今回の展示は前田育徳会展示室とあわせ、美術工芸の題材として最も多く表現されているともいえる「花」と「鳥」の特集です。
 館蔵品・寄託品のなかから日本美術を中心とする絵画、陶磁、漆芸に様々に表現された作品19点を展示し、華やかな美の世界を味わっていただきます。また同時に開催する特別展「ランゲン夫妻の眼 日本美の精華」はヨーロッパ人に好まれた日本美術であり、あわせてご覧いただくことによって、あらためて日本人の美意識を認識いただける絶好の機会ともいえましょう。なお、常設展示部門の古九谷も、テーマにふさわしい作品を展示しています。

□柳鷺図 6曲1双 狩野尚信 江戸17世紀
  一双の大画面を通して群青で彩った水面を横に配し、柳に白鷺、岩組を描き、上部に金雲を置き、遠山を展望する広大な構成です。右隻には春を、左隻には冬を表現し、季節の移り変わりを象徴的に描いています。
 金地に映える群青や緑青、胡粉の彩色が効果的で、静謐な趣のなかにも装飾性に富む格調の高い作品です。柳鷺は中国において豊穣多産を象徴する吉祥図です。
  筆者の狩野尚信(1607〜50)は探幽の弟であり、兄とともに障屏画を多く描いたと伝えられていますが、伝世する金地濃彩の障屏画はほとんどなく、その点からも貴重な優品です。両端に晩年の号「自適斎」の落款があるところから、尚信晩年の代表作といえましょう。

蒔絵芦に水鳥図硯箱 1合 桃山17世紀
 総体黒漆塗の長方形で、やや甲盛のある被蓋造の硯箱です。全体に梨子地の雲層を配し、黒漆地に波濤と芦、水鳥を、梨子地部分に海松貝をそれぞれ金平蒔絵で加飾し、桃山時代に一世を風靡した高台寺蒔絵を示しています。内部には懸子、下水板、硯、水滴が納められています。
 
主な展示作品
  古九谷

        色絵鶉草花図平鉢
        色絵鳳凰図平鉢
        色絵百花散双鳥図平鉢
  
  特集 花と鳥の世界
        柳鷺図    狩野尚信  江戸時代
        蓮に翡翠図  久隅守景  江戸時代
        梅に孔雀図  長沢芦雪  江戸時代
        蒔絵芦に水鳥図硯箱    桃山時代
        交趾金花鳥香合       中国・明時代
 
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展覧会案内(年間スケジュールへ) [前半4月〜9月] [後半10月〜翌年3月]