南北に細長い島国としての我が国は、四季折々の変化に富み、季節ごとに数多くの花が咲き、また身近な鳥や遠くから渡り鳥なども飛来します。
春には花見として爛漫と咲く桜を愛で、その美しい花が散る様から、寂しさや無情を感じ、それを絵画化したり工芸意匠に表すなど、桜は繊細な日本人の感性を最も象徴した花の一つといえましょう。
このような花や鳥、殊に蓮などは古くから仏教の世界に取り入れられ、仏画や経典・仏具などに表されました。また花や鳥は、万葉集や古今集・源氏物語などの和歌や物語といった文学の世界においても扱われ、そこから絵画化されたり工芸意匠としても転化しています。 花と鳥に限らず花卉(花や木)や草虫・小動物・魚藻・蔬菜などをも対象とし、またそれらを組み合わせた絵画を一般に花鳥画と呼んでいます。人物画や山水画と並び、東洋で最も重んじられた画題の一つです。 |
中国では、南朝時代に既に興り、唐時代から五代の時期に専門の画家が出て鑑賞画として確立し、大きく発展しました。そして宋時代には宮廷画院による院体花鳥画が隆盛しています。
我が国でも南北朝時代の頃から渡来した禅僧たちの影響を受け水墨花鳥画が描かれだし、室町時代には院体系の花鳥画も接収され、大和絵系や漢画系の画家たちにより制作されました。桃山時代には英雄覇者たちの好みを受けて大画面の障屏画に描かれ発達し、江戸時代にいたっては諸流派の筆による百花繚乱の呈をなすにいたりました。
本展は、中国と我が国の絵画作品に工芸品を交え構成するものです。今回、ゆっくりとぜひ鑑賞願いたいものの一つが、伝雪舟等楊筆の「◎四季花鳥図屏風」です。生命力あふれる花鳥と自然の移ろいが見事に表されており、雪舟真筆に極めて近い秀作です。
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