前田育徳会展示室

特別陳列 近代の美術  4月1日(土)〜17日(月)
 前田育徳会所蔵品には、優れた近代美術作品が多くみえます。明治維新を契機に近代国家形成のため急激な西洋文化・技術の受容が行われ、その影響は美術にも及び、多様な様相が展開することとなりましたが、その推移は今回の展示品においてもうかがえるものといえます。
 油彩画においては、フランスを中心とした同時代のヨーロッパ美術であるレアリズムや外光派・印象派の作品、あるいはアカデミックと印象派との折衷派の作品などの同時代の外国作家の作品群で、これらはわが国の美術にも多くの影響を与えたものです。さらに明治時代に日本人が留学をして、西洋美術を学習・吸収した先駆的な作品もみえます。
 伝統的な日本画としては、明治維新による政治・社会体制の変革に遭い、また進ちょく著しい西洋画の陰にあっても、旧守的生活スタイル内に機能し受け継がれた名品も少なくなく、さらに国粋的傾向を持ちながらも、西洋画的感覚と技法を採り入れて作り出された日本画の優品も見られます。
 こうした近代前半の作品に対し、明治時代末から大正時代・第二次大戦前頃までにかけての作品は、それまでの近代化の成果が展覧会を舞台に繰り広げられた時代でもあり、作家各自の個性的な表現が目立ってきます。前田家と前田育徳会所蔵品においても後世、大家と称されるような作家たちの作品が少なからずみられます。
 彫刻でも絵画の動きと同じく、アカデミックな作風とともに木彫に優品がみられます。同会の近代美術品は、コレクションの中心人物であった当時の当主の志向や交友関係に係わるところが多かったといわれますが、その幅広いコレクションは近代日本の美術史の側面を語るに足る内容であるといえましょう。
 今回の展示では、外国作家の名品をはじめ、日本画の秀作と彫刻作品を展示するもので、多様な近代美術の諸相がお楽しみいただけます。
     


第2展示室

特集 ガラスの美 4月1日(土)〜17日(月)
 当館所蔵のガラス作品の展示です。
 ガラス製造の起源については明らかではありませんが、おそらく紀元前2000年以前の西アジアまたはエジプトにおいて、ビーズなどの小さなものが作られたと思われます。また最初にガラスの器が作られたのは、紀元前16世紀のメソポタミアであったとされており、その後、エジプトなどでその技術が花開きました。
  今回展示する作品の中で最も古い作品は、紀元前3〜2世紀にヨルダンで作られた鉢です。底が尖った鉢は柔らかい地面に埋めて使用したもので、鋳造ガラスのやや厚ぼったい作品です。表面にはわずかに虹彩が残った半透明のシンプルな形です。
  10世紀以来、ヨーロッパのガラス製造の中心地だったヴェネツィアは、火災の危険を回避し、完全に透明なガラス製法の秘密が、外部に漏れるのを防ぐために、1291年にガラス職人と工房がムラノ島へ移されました。
ヴェネツィアで作られた作品からは、乳白色のガラスが糸状に織り込まれる、古代メソポタミアの技法を復興した「レース・グラス蓋付大杯」、トルコで作られたものを写した、華やかな色エナメル彩の鶴首瓶などを展示します。
  職人たちの引き抜きや技法の秘密の流出により、ヴェネツィアのガラス製造は17世紀頃より衰退し、中心はボヘミアへと移行しました。またこうしたボヘミアやドイツのカリ・ガラスはヴェネツィアのソーダ・ガラスよりも堅牢で、複雑な装飾を彫刻で施すのに適していたこともありました。
 この中から、重ね合わせた器の間に金箔を挟み込む、ゴールドサンドイッチグラスや、黒エナメル彩のシュバルツロットの杯などを展示します。
  今回の展示ではこれらを含む、ヨーロッパ製の作品を中心とした30点の展観で、ガラスの歴史の一端をご覧いただきます。

展覧会案内 年間スケジュール  [前半4月〜9月] [後半10月〜翌年3月]