前田育徳会展示室

 特別陳列 前田家 唐物への憧れ

 1月4日(木)〜2月12日(月・振休)


 唐物とは、主として中国や朝鮮などから我が国にもたらされた品物で、一般には中国のものを指します。
 
すでに鎌倉時代に禅宗寺院を中心に入っていましたが、室町時代、殊に三代将軍足利義満以後、対明貿易により多くのものが請来されました。将軍家や有力武家の間では、数多くの座敷におびただしい量の唐物を飾り付けることが流行し、室町時代の美術に中国愛好という側面を植え付けることとなりました。
 さて加賀藩主前田家でも大名道具としての家格を示す唐物が多く集められました。 『文禄三年前田邸御成記』には、御成書院を始め数多くの部屋の道具の飾り付けが記され、図が添えられています。「上品之唐絵掛物」や「向獅子唐銅香炉」ほか、明らかに唐物と察せられる多くの道具がしつらえたことがわかります。頭に「文禄三次甲申九月廿六日、於大坂秀義公、加賀大納言利家卿之宅御成之時(略)」とあり、文禄3年(1594)9月26日、
大坂の利家邸に秀吉が御成になったときとされていますが、同年4月8日、京都の利家邸のときではないかと考えられます。利家はその後、慶長2年(1597)、秀吉より、かつて足利義輝などが所持した大名物「◎茄子茶入 銘冨士」を拝領しました。
  その後の歴代藩主も唐物に憧れ逸品を収集しています。三代藩主前田利常は、京都の公家文化に影響を受けながらも、寛永14年(1637)に家臣を長崎に派遣させて膨大な量の名物裂や中国の漆器・陶磁器を購入させています。また五代藩主前田綱紀は、和・漢・韓にわたる多くの書物を収集しましたが、中でも「◎世説新語・世説叙録(宋刊本)」「◎重広会史(宋刊本)」などは、中国の歴史を知るうえで貴重な図書です。
  版籍奉還以後でも前田家十六代利為公は、伝李龍眠筆の「◎馬郎婦観音像」などの名品を収集しました。
 今回は、46点を公開します。
主な展示作品   (は重要文化財)    

           ◎世説新語・世説叙録(宋刊本)
           ◎重広会史(宋刊本)
           ◎馬郎婦観音像
           箔絵山水人物図衝立
           青磁八葉蓮華鉢 など

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 第2展示室

 特集 唐物への憧れ
 

 1月4日(木)〜2月12日(月・振休)


1月13日から企画展示室で開催される「中国文明展」にあわせ、当館の所蔵品・寄託品の中から、中国のやきもの15点、漆6点に、中国を描いた日本の絵画2点のあわせて23点を展示し、日本人が憧れた唐物の美を御鑑賞いただきます。

 ◎西湖図 秋月等観筆
  西湖は、中国浙江省の杭州近郊に位置する景勝地です。古くから文人墨客が訪れ、恰好の画題として多くの画家たちに描かれてきました。
 作者の秋月(?〜1520)は薩摩の武士の出身で、出家して山口の雪舟のもとで絵を学びました。
 この作品は、緻密な描写で俯瞰的に大湖の景を捉えています。その構成力・筆法は、師の雪舟を彷彿とさせるものがあります。秋月は1492年以降に入明していると思われますが、自らの眼で西湖を確認した上で、96年3月に北京で制作されたことが、画面左上の書き込みから知ることができます。

 秋月の数少ない作品の中でも、制作年等が明確な貴重な作品です。

 古赤絵金襴手仙盞瓶
  仙盞瓶は、盛盞瓶ともいい、語源は明らかではありませんが、その形体は扁平な胴に、細長くのびる注口や華奢な把手が付けられた蓋付の水注です。イスラム圏の金属製の水注の影響と思われる、異国風な趣が観じられます。
  金襴手は、明時代の嘉靖年間(1522〜66)に景徳鎮民窯で生産されたものが多く、赤絵金襴手、萌黄地金襴手、瑠璃地金襴手など多くの種類があります。この華やかな美しさは日本で大変好まれ、桃山から江戸時代初期頃にかけて舶載されたようです。
 この作品は蓋が欠失し、金彩が剥落していて惜しまれますが、当初は絢爛豪華な趣を呈していたことと推察されます。

主な展示作品   (は重要文化財)

        
西湖図
        
古赤絵金襴手仙盞瓶
        
青磁袴腰香炉
        
存星卓

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